なぜ「富士山」はそこにあるのか?…地球上で“唯一”の必然的な理由
2021年06月07日 公開
温暖化の影響は植生の変化にも
1万7000年前から8000年前にかけてマグマの性質を変化させ、多量の溶岩を流す噴火に変わり、5500年前から3600年前頃にかけての噴火活動で大きく成長して、現在の3776mの新富士がつくられた(町田 2006)。
富士山は日本で一番高い山であるが、日本アルプスや日高山脈で見られるような、カールやモレーン、U字谷といった明瞭な氷河地形が見られない。日本アルプスに氷河があった2万年前頃、富士山は存在していたが、その後の富士山の活発な火山活動により、地表は噴出物で覆われている。
(「カール」「モレーン」「U字谷」について説明しておくと、氷河は流れるときに地面をすり鉢状に削ってカール地形をつくり、その削った砂礫をブルドーザーのように押し運ぶ。そして、温暖化すると氷河が後退しはじめる。
つまり氷河が一番拡大したときの氷河前面に砂礫の高まり、すなわちモレーンを残す。さらに海外のような長大な氷河は谷を削って流れて、谷の断面がU字形のU字谷をつくる。)
また、日本アルプスでは森林限界付近にハイマツが生育しているが、富士山には見られない。富士山にはハイマツに代わって、カラマツがハイマツと同様に低木が地を這うような形態で生育している。その理由の1つとして、富士山が比較的新しく誕生した火山であることがあげられる。
新潟大学の崎尾均教授(現・BOTANICAL ACADEMY主宰)の研究によれば、五合目付近のカラマツ林の森林限界が、最近40年で斜面上を約30m上方に移動し、地面を這うように広がっていたカラマツが、直立して生えるように変化したという。温暖化の影響と考えられている。
【参考文献】
町田 洋(2006):「富士山と周辺の火山」町田洋・松田時彦・海津正倫・小泉武栄編『日本の地形5 中部』東京大学出版会、45-57