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ブラック企業"織田家"に転職してしまった明智光秀と「本能寺の変への布石」

本郷和人(東京大学教授)

2021年07月19日 公開 2024年12月16日 更新

最大のミステリーといわれる「本能寺の変」。家臣・明智光秀はなぜ織田信長を討ったのでしょうか。頭もよく調整力もあって優秀なのに、なかなか上司に恵まれなかった明智光秀。

織田信長に抜擢されて頭角を現していきますが、織田家はなかなかに超絶ブラック企業だったようです。営業ツール(=自分の兵)をもたされず飛び込み営業をさせられるなんて、現代にもそんな会社ありそうですね。

明智光秀は何を思って「本能寺の変」を起こしたのか。答えの出ないミステリー、あなたはどう思いますか?

※本稿は、本郷和人・監修、カレー沢薫・マンガの『東大脱力講義 ゆるい日本史』(小学館)から一部抜粋・編集したものです。

 

優秀な明智光秀でも不遇の時代があった

明智光秀は謎の人物で、歴史の舞台に登場するのは40歳。それまでは、朝倉家に仕えていたうだつの上がらないサラリーマンでした。能力はあるのに上司に恵まれず、安月給だから、医者のバイトなんかして。

そんなとき、主君の朝倉を頼ってやってきたのが将軍家・足利義昭の一団。

当時の義昭は仏門に入っていたんだけど、兄の13代将軍・義輝が討たれて、「オレも将軍ワンチャンある?」と思っていたんです。でも、後ろ盾になってくれる人がいない。

で、福井の朝倉を頼ろうとしたけど、福井まで行く道中で、誰に狙われるかわからない。そこで、義昭一行を福井まで無事に連れてくる役目として光秀に白羽の矢がたったんです。

もちろん光秀はちゃんと送り届けましたが、いざ義昭に会った朝倉は、「せっかく来てくれたからおもてなしはします。でも、あなたのためにウチの兵は出しませんよ」と残念な展開に。

「他に誰か頼れる人いないかな」という義昭に光秀は、「美濃国の織田信長っていうのがイケイケなので、紹介します」といって引き合わせました。

 

織田家は正真正銘のブラック企業!?

そんな光秀の交渉術を認めた信長が「ウチで働きなよ」とヘッドハンティングして、光秀は朝倉家から織田家に転職。

ただ……織田家は正真正銘のブラック企業。光秀の配属先はいわゆる営業部、各国を治めている大名のところに行って「織田家に仕えませんか?」と織田の手下を増やすのが仕事。

でも、営業ツール(=自分の兵)をほとんどもたせてもらえずに飛び込み営業をして、断られたら相手をぶっつぶして征服するのが実際の業務。

そんな中でも、能力のある光秀は、どんどん成績を上げていきます。ちなみに、光秀と双璧をなす営業マンが、かの豊臣秀吉です。

光秀は信長の評価を得るわけですが、行きついたところは本能寺の変。

襲ってきたのが光秀だとわかったときに信長が観念し、「是非に及ばず(しょうがねえ:超訳)」といったとされています。それは、光秀の実力を知っているから「しょうがねえ、もうダメだ」なのか、自業自得だから「しょうがねえ」のかは、定かではありません。

なぜ光秀が本能寺の変を起こしたのかについてはさまざまな説があるけど、あまりにも織田家がブラックだったから、「いま殺したら、オレ寝れる」みたいなことだったのかも。

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謎だらけの「本能寺の変」

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