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子どもが「トウモコロシ」と言い間違える納得の理由

石川幹人(明治大学教授)

2021年10月21日 公開 2022年06月07日 更新

「なぜ穴を見るとのぞきたくなるの?」「普通って誰が決めるの?」「怖い夢をみないようにはできないの?」ー子どものころ、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。その疑問、学者が本気で回答します!明治大学教授で認知心理学、進化心理学の第一人者の石川幹人氏が実際の小学校6年生まで子どもたち、または大人が子どもだったころに抱いていてた疑問・難問に全力でお答えました。

本記事は『なぜ、穴を見つけるとのぞきたくなるの?』(朝日新聞出版)からの一部抜粋です。

 

なぜ小さい子どもは「トウモコロシ」「おたかづけ」と言い間違える?

それはそのほうが、脳に負荷がかからないからです。私も小学生の頃、「メガネ屋さん」を「ネガメ屋さん」と言って家族によく笑われました。笑われるとくやしくて、「メガネもネガメも大して違わないやい」と、私は"負け惜しみ"を言っていました。

この言い間違いには理由があって、近所のメガネ屋さんが看板の一部の横書き文字を、明治時代のように右から左に「メガネ」と書いてあったのです。私はそれを見て「眼鏡はネガメだ」と覚えてしまったのでした。

 

脳の負荷を下げるために言い間違える

大人になって脳の勉強をすると、私の"負け惜しみ"には一理あると思うようになりました。脳で情報を一時的に保存しておく作業記憶は、それほど機能が高くありません。

だから「メガネ」も「ネガメ」も「ガメネ」も「メネガ」もみんな「眼鏡」だということにして、あまり音の順番にこだわらないほうが、脳の不可が小さくて済むのです。

でも、そうすると「眼鏡」はいいけど、「時計」は問題です。「とけい」の順番が変わって「けいと(毛糸)」や「といけ(外池:人名)」になると別の意味と混同します。

私たちの言語では、音の順番によって違う言葉にしています。そうしないと、言葉が足りなくなるのです。「と」「け」「い」の文字の順番を変えると六つの異なる言葉ができるので、順番を気にして別々の意味を与えると6倍の新たな言葉として使えるわけです。

 

作業記憶はそんなに優秀ではない

ところが、順番を気にすれば、脳の負荷は高まります。それが言い間違いの発生原因になるのです。三つの音ならまだしも、五つの音で「けたかおづ」や、六つの音で「ロトシウコモ」となると、覚えて声に出すのがたいへんです。

なぜならば、脳で情報を一時的に保存しておく作業記憶は数秒で消えてしまうので、五つ以上の音を保ち続けるのがたいへんなのです。一つひとつを保ち続けられたとしても、それらの順番を覚えておくのはさらに負荷が高くなります。

私たちは「おかたづけ」や「トウモロコシ」を懸命に覚えて、ひと固まりで簡単に言えるように訓練しているのです。そのため言葉の訓練途中の子どもは、「トウモロコシ」を覚えていたとしても、「トウモ」まで声に出した段階で、次の順番を混同し「コロシ」と思わず言ってしまいます。

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「トウモコロシ」は「殺し」が原因

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