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「経費精算を出さない人」がなぜか逆ギレする理由

カレー沢薫(漫画家・コラムニスト)

2021年11月22日 公開 2024年12月16日 更新

仕事に対しやる気があり、人間関係に繊細なのはいいが、それで健康を害してしまっては無意味。時には、仕事に無感情な人間の姿勢を取り入れ、「どうでもいいことでは悩まないようにする」のも大事なのでは? そんなわけで、新刊『反応したら負け』から、経費精算を催促されてキレる人の対処法をお届けしたい。

※本稿は、カレー沢薫著『反応したら負け』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

事務処理は「己の仕事」だと思っていない

これは某企業の経理部からのタレコミである。企業というより、研究所、そして何HPなのか、というのは読者の想像にお任せするが、これはPHP研究所だけでなく、どこの企業にも一人はいると言っても過言ではない人間の話である。

それが「経費精算を催促されてキレる人」だ。キレるまで行くのはレアかもしれないが、精算が遅い奴、というか事務作業全般が遅い奴はどこの会社にも存在する。

業種は数あれど、事務作業が存在しない仕事はない。仕事をすれば請求書を出さなければいけないからだ。そう言いたいところだが、漫画家には請求書というものが存在しない。あるところはあるが、ないところも多く、漫画の原稿を渡せばその時点で原稿料が振り込まれる仕組みになっている。

それ故に、ただでさえ社会性がない漫画家から(個人の感想)「書類を出す」という概念すら失われてしまった。しかし漫画家に「毎月請求書を出す」という高度な作業をさせたら、経理システムが破綻してしまう。

私も数年前まで事務職をしており、この事務作業したくない病たちには手を焼かされてきた。その経験を踏まえ、今では立派な手を焼かせる側として毎月、請求書が必要な会社からは「請求書を出せ」というメールを賜っている。

子育て経験のある年配女性が、必ずしも現役子育て中の母親に優しいとは限らないという構図だ。正直、厳しいまである。経費精算など、事務処理をなかなかしない奴の心理というのは、大変申し上げにくいが、それが「己の仕事」と思っていないのだ。

自分の仕事という認識がなく、事務作業するための時間や体力など全く考慮せずスケジュールを組むのである。そうすると当然、事務作業をする力は残されないので「経費精算をしろ」と言われると「俺は忙しいんだよ」という逆ギレに繋がる。

私も自分の仕事は「期日までに原稿を出すこと」だと思っている。ちなみに、クオリティは問わない。よって、原稿の締め切りだけは覚えている限り守るのだが、逆に言うと他のことは遅れてもいいと思っており、最悪「やらなくてもいい」とさえ思ってしまう。

そういう考え方なので、請求書を催促されると「俺は原稿を期日までに出し、それで力を使い果たし、内臓も破裂しているのに、なぜそこまでやらなければいけないのか」という逆ギレが起こり、ますますやらなくなってしまうのだ。

 

損してでも「事務作業をしたくない人」も世の中にはいる

その結果、「マイナンバーを出せ」というお達しを7年ぐらい無視してしまっているが、これは「マイナンバーを出せ」の後に「さもなくば」という話をしてくる会社がないせいでもある。

つまり、事務作業をしない奴を動かすには「さもなくば」を用意しなければいけないのである。請求書であれば「期日までに出さなければ支払いがひと月遅れる」、経費精算であれば「もう精算できないから自腹」など、やらなければ自分にマイナスがあることを示せば、焦ってやらなくはない。

ちなみに、マイナンバーを7年提出しなくても「さもなくば」の話をしてこないのは、マジで今のところ「さもなくば」がないため「出せ」と言い続けるしかないのだろう。

しかし、世の中にはこれの上をいく「事務作業したら死ぬ病」が存在し、「請求書なしでは支払えない」と言っても出さず、堂々とタダ働きするフリーランスが割といるのだ。それと同じように、経費の精算手続きをするぐらいなら自腹でいいという者も少なからず存在する。

まさに「金を払ってでも事務作業をしたくない」という人間なので「損をするぞ」と脅しても効果がないため、もはや偉い人に注意してもらうしかない。

厄介なタイプであるが、そういう人間は経費精算だけではなく「面倒くさい」という理由で永遠に損をし続ける厄介な人生を歩んでいる人間でもあるのだ。

 

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