「働きがい」か「年収」か...日本の会社員がFIREを目指すときの心構え
2022年01月05日 公開 2022年01月05日 更新
「FIRE(ファイア)」という言葉が流行の兆しをみせている。「Financial Independence, Retire Early」の略で、日本語では「経済的な独立と早期退職」という意味だ。アメリカで広まったとされるムーブメントで、日本でも将来の経済的な不安から取り入れることへ期待の声が集まっている。
ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんは、著書『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』の中で転職をして年収増を目指すのは、考えるべき選択肢のひとつであると指摘する。FIREするにあたって"年収"と"働きがい"のバランスをどう捉えるべきなのだろうか。
※本稿は、山崎俊輔著『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』(Discover21)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
仕事にはお金以外の価値もある…が
私たちが仕事をするのはお金を稼いで生活費を確保したり、資産形成を行う資金を確保するためです。しかしお金のためだけに私たちは働いているわけではありません。
顧客の笑顔や「いつもありがとうね!」のような感謝の言葉を得たとき、私たちは仕事をしていてよかったと感じます。これが「働きがい」です。
上司や社長が時々、「がんばってるな」とねぎらいの言葉をかけてくれたとき、仕事ぶりをちゃんと見ていてくれたのだなと喜びを覚えることもあります。
無感動に業務時間を過ごしている人もいると思いますが、人生の多くの時間を費やす仕事が、お金以外の部分でも自分に影響を及ぼしていることは間違いありません。
しかし、それには危うさもあります。「働きがいの搾取」という問題です。
働きがいはしばしば搾取される
まじめに働き、顧客を大切に思うことは大切です。また会社に雇ってもらえたという恩義を感じて忠誠を尽くすのもいいでしょう。
しかし、その忠誠心や働きがいが「搾取」されていないか疑ってかかることも必要です。
たとえば「この会社には私を雇ってくれたという恩義がある」と思うあまり、自分の能力に見合う給料をくれない状況を見過ごしている人がいます。何年も給料がアップしない状態などがこれにあたります。
あるいは「あなたの仕事は社会の役に立っている」と強くアピールする会社が、実はサービス残業を強いたり、社員の高い貢献を安く買い叩いていることがあります。ブラック企業です。
教育社会学者の本田由紀教授(東京大学)は、これを「やりがい搾取」と呼んでいます。海外の研究事例でも、「長時間労働や時間外労働などで搾取された労働者は、周囲から『やる気のある人だ』と評価されやすい」という考察をしているそうです。
こうした人たち(多くはまじめないい人です)が、転職サイトでカウンセリングを受けると、「あなたの経験や資格を考慮すればプラス100万円の転職が可能かもしれません」と言われることがあります。
言い換えればあなたは働きがいややりがいの代わりに「年100万円安くこき使われていた」ということです。実は、会社に恩義を感じる必要はなかったのです。