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「転職は得ですか? 損ですか?」に現役人事部長が出した答え

グロねえ(大手日系グローバル企業・現役人事部長)

2021年09月02日 公開

終身雇用という言葉は聞かれなくなり、転職は当たり前の時代に突入している。しかしキャリアアップにつながらない転職を繰り返し、苦しんでいる人が増えているのも事実である。果たして転職は得なのか、損なのか…。

現役人事部長であるグロねえ氏は、重要なポイントさえしっかりと押さえれば、新しい職場で大きな苦労をせずとも、順調にキャリアアップを図ることは可能だと語る。

本稿では、同氏が転職を成功させるために重要な「転職後」のアドバイスを送る。

※本稿は、グロねえ著『「転職後」の教科書』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

 

転職の目安は“3年”

次のステージに行くためには、「過去の栄光を捨てる勇気をどれだけ持てるか?」が重要になります。自分としての「栄光」を3年目なりに得られているならば、そのピーク時に「あえて捨てることを選ぶ」のです。

「栄光と言えるものはない」という人もいるかもしれませんが、その場合には「ラクに仕事が回せるようになった」が一つの目安。「ラク」と「楽しい」も、ある程度の期間がすぎたら、惜しいと思っても手放すことが大事です。

栄光も、ラクも楽しさも、「引きどき」を逃してしまうと、次のステージへと向かうことが本当に難しくなります。「旬」でピークの状態であれば、自分にも自信があり、周囲の目も好意的なので、自分の思う方向に持っていくことがしやすいでしょう。

社内異動であれば、自ら希望したところにいける可能性も高まります。転職であれば年収やキャリアアップなどのステージをぐっと上げたチャレンジもできたり、その機会の幅が広がるでしょう。良い意味で相手が「錯覚」や「欲目」で見てくれている状態なので、それを利用しない手はありません。

職業人としての人生は意外と長いもの。無駄に過去の栄光にすがるようなことはやめて、さっさと次に行き、新しい栄光を作って、手放して、また作って……とどんどん活躍するステージを上げていきましょう。

変化が激しい時代。ビジネスには不変の王道的なところがある一方、過去のやり方がまったく通じない部分もあります。またコロナ禍のように、予想だにしなかったことが起こる中で、いかに柔軟性をもって動けるかを問われることもあります。

そういう視点で考えても、常に成長し続ける人こそが敏感にチャンスを自分のものにして、変化に物怖じすることなく自分の実力を発揮できると言えるでしょう。

 

過去の棚卸しで、キャリアの方向性を確認する

「あっという間」でも、「長かった」でも、3年間で何をやったかをしっかりと振り返ることが大事です。私は、過去の棚卸しには大きく二段階あると考えています。

(1)過去の出来事や成果を整理すること
(2)その内容を元に、望むキャリアの方向性の確認をすること

(1)を一言で言えば、頭の中にあるものを吐き出し、「書き落とす」ということです。頭の中で一生懸命考えるより、思いつくままとにかく書き出す。ただ書き出すというよりも、頭の中のものを目に見える形で「落とす」という意味合いで「書き落とす」のです。

書くよりも、もっと思いつくままに……という人は「吐き出す」もありです。一人で話してそれを録音する、人に聞いてもらいながら自分の3年間を語ってみることで「吐き出す」のです。

書き落とす、吐き出す、いずれかの方法で頭の中にあるものを一旦外に出し切った後には、それを職務経歴書などに時系列順で落とし込みます。そうやってざっと書いてみたら、「棚卸し」の一段階目は終了です。

ここで、3年間の振り返りを元に、今の自分が望むキャリアの方向と合っているかを、原点回帰して考えてみることをお勧めします。

私の場合、営業などのように直接売上に貢献するより、裏方として人(社員)のために働くことの方がモチベーションが上がり、自分の力を発揮できると思っています。よって、「その方向性に合っているのか?」が私にとっての確認ポイントです。

出世や役職などの方向性を自分の指針として持っている人もいるかもしれませんし、それを否定はしません。ただ、それで続くモチベーションには限界があるように思いますので、それを一つの大きな方向性として持ちつつも、「それが本当に自分のしたいことや成し得たいことに合致しているか?」を考えてみるのが良いと思っています。

大事なのは、とにかく「自分が向かいたい方向とのギャップを確認する。何かしらのギャップがあれば何をどうすれば埋められるかを考える」ということです。

その過程において「本来自分がやりたいことや考える方向性からズレており、軌道修正が必要であると感じるけれど、今の仕事をさらに続けて成果を出したい」となったら……方向性を明確にした上での次の新たな3年を考えたら良いでしょう。

その結果、転職や異動をすることによって、自分の行きたい方向を目指すとなれば、その方法を選べば良いだけです。

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