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生き方

いじめられ絶望していた小学生が、大人になって選んだ「他人と少し違う法律の道」

山崎聡一郎(『子ども六法』著者)

2022年04月13日 公開

 

「自分の生みだせる価値のあることは何だろう?」

大学時代の自費出版から約五年かかって、よりよい形で世に送りだすことができました。最初の想定より、小さい子どもたちにも読んでもらっているのも嬉しいです。

けれども出版したからゴールだとは思っていません。目下の目標は、5~10年後に『こども六法』が、すべての学校の教室に一冊ずつ置かれるようになり、子どもたちみんなが気になったときに「いつでも読める」ようになることです。

いじめの中には犯罪に相当する行為もあること、被害者が訴えなければ裁かれない犯罪もあること、いじめを解決することは大人の責任だということなど、いじめられていた小学校時代の自分が知りたかったこと、そして今いじめられている子どもたちに伝えたいことがこの本には盛りこまれています。

人生を「強く」生きていくためには、知識と情報を得て、「自分でコントロールできる領域」を増やすことがたいせつだと思うんです。その知識と情報を今必要としている子どもたちに届けることが、わたしの使命です。

わたしは教育研究者であり、『こども六法』の著者であるというだけでなく、写真家、声楽家、ミュージカル俳優とさまざまな顔を持っています。劇団四季『ノートルダムの鐘』に出演するほか、コンサート興行の企画運営もしており、「いろいろな分野で成功しているね」と言われることもあります。

けれども成功の裏で、失敗している数はほかの人よりずっと多いと思います。高校時代の部活動でもそうでしたが、少しでも興味があればとにかくいろいろなことに同時に手をつけてみる。ひとつのことだけを集中してやりきれる人は立派だし、うらやましい。

でもそれができないから根性がないとか、人間的に価値がないんじゃないと思うんです。ひとつのことをやってみてちょっと行きづまったら、ほかの「やりたいこと」も見つけてやってみればいい。

実際に行動して手をつけてみないと、自分がどこまでやれるか分からないし、それぞれのチャレンジの横のつながりで、思いがけない相乗効果が生まれることもある。だからひとつに決めなくてもいい、あきっぽくてもいい、と言いたいです。

大人は「人の迷惑にならないように生きろ」「人のために生きろ」と言うかもしれません。けれども、みんなが「自分のため」に生きてもいいと思うんです。

そうすればもっと、いじめも少なくなって優しい社会になると思うんです。たとえ、物質的に満たされていても、心が満たされていないのはなぜでしょうか? 自分が自分の納得する人生を歩んでいないと、人に優しくしたり気配りするような気持ちの余裕が持てないのではないでしょうか。

また、自分が納得できる人生を生きていれば、人に批判されても痛くもかゆくもないし、ほかの人が自分と違うことをしていても認めることができる。もっとみんなが自分が幸せになるために注力し、時間を使えるようになったら、よりいい循環になっていけるのかなと思います。

安定している会社に入るとか、安定している仕事に就くというのが大事と言う大人もいます。もちろんその枠組みの中に自分のやりたいことがあれば、そこに乗っかってもいいとは思います。

でももしそこに自分のやりたいことがなければ、「自分で仕事を生みだすとしたらどんな形がいいんだろう?」というのを考えるのがたいせつだと思います。そして、どんな仕事をやるにしろ「自分の生みだせる価値のあることは何だろう?」と考えてみるといいと思います。

わたしの父は、今でもわたしに「どこか会社に就職しろ」と言います。でもわたしはあきっぽい性格でもあるし、いくら安定した収入が得られたとしても自分がやりたくないことをやって成果をあげる自信がなかった。自分の生みだせる価値のあることは何なのか考えて、世間体や固定観念にとらわれずに自分の仕事を決めていくといいと思います。

 

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