これまで記憶力日本選手権大会に6度出場し、そのすべてで優勝して記憶力日本一最多記録者となった池田義博氏。国際大会である2013年の世界記憶力選手権では、日本人初の「記憶力グランドマスター」の称号も獲得した。
そんな池田氏は、新著『勝手に集中力がつく1分ドリル』(サンマーク出版)で、「とにかく時間がかかる」「やる気が出ない」といった悩みの原因は集中力の低下にあると指摘する。集中力は記憶力にも影響を与えるというが、集中力が高い人の特徴とは。詳しく教えてもらった。
40代半ばで記憶力日本選手権に優勝
皆さん驚かれるのですが、じつは初めて記憶力日本選手権大会に出場したときの私は、40代半ばの、普通の大学を出た普通の会社員でした。そんな、一般的には脳の認知機能が衰え始めるとされる年代の私が、高IQ者の団体であるMENSAのメンバーや東京大学の大学院生、能力開発教室に通っている若者達などがひしめくなか優勝できたのには秘密があります。それが、集中力です。
このお話をすると、よく「もとから記憶力がよかったのでは?」と聞かれますが、そんなことはまったくありません。私はもともと理数系のエンジニアで、記憶や暗記に関わることなどない人生でした。それが家業の学習塾を継ぐことになり、使える教育コンテンツはないかと探していたところ、いわゆる"記憶法"に偶然出会いました。以降、独自に脳が持つ記憶のしくみを調べてトレーニングを積み、記憶力日本一になりました。
記憶力は技術によって高められる
記憶力と聞くと「一度見たり聞いたりしたものを覚えていられる能力」と考える方が多いと思います。それも確かに記憶力の一種ですが、残念ながら脳の性質上どんなに訓練しても少しの時間、そして少しの量しか覚えられない類の記憶力です。
私が申し上げているのは「長い期間、しかも大量に覚えておくことができる能力」。こちらの記憶力は、才能というよりも脳の記憶のメカニズムや心理学から導き出された「技術」で伸ばすことができます。技術を習得して磨きをかければ、誰でも大量の物事を記憶できるようになるのです。
「記憶に技術?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。記憶にも、スポーツなどと同じように技術の習得が欠かせません。野球には野球の、サッカーにはサッカー特有の技術があるように、記憶にも身につけ、磨くべき技術があるのです。
記憶力日本選手権に参加するような選手たちは全員、こうした技術を駆使して大会に挑みます。記憶の技術を脳のしくみから考えると、いくつかに集約されていき、それらは誰もが知り得るもの。つまり極論すると、誰もが同じような技術を身につけて競技に臨んでいることになります。