歳をとってから若い人に尊敬される頭の持ち主になるには?40代から80代まで、元気な脳でいられる秘訣を教えます!
※本稿は、和田秀樹著『固有名詞が出てこなくなったら認知症の始まりですか?』(かや書房)を一部抜粋、編集したものです。
頭がいい人はどこが違うのか?
政治家でも経営者でも「この人は頭がいい!」という人がいます。そんな人の脳とそうでない人の脳は、どこが違うのでしょうか?
私は若い頃、浴風会病院という高齢者専門の総合病院に約10年勤め、そのときに、亡くなった人の脳の解剖所見の検討会に出て、かなりの数の脳を診てきました。その中には生前、ほかの人から「頭がいい!」と称賛されていた人もたくさんいらっしゃいましたし、当然そうでない人もいらっしゃいました。
もちろん、認知症がひどいとか、そうでないということはわかるのですが、「頭がいい人」と「そうでない人」との差はわかりませんでした。恐らくは「頭がいい人」と「そうでない人」は神経細胞のネットワークの量が異なるのでしょうが、現在はそれを測定することもできません。
しかし、解剖やCT、MRIなどの画像をたくさん診て、わかったこともあります。それは、脳の萎縮度は「頭がいい人」「そうでない人」とあまり関係がないということです。
立派な政治家で、高齢になっても若い人に人気があった人の脳が極端に萎縮していることもありましたが、彼は意見もしっかりとしていて、若い政治家に病院でさまざまなアドバイスをしていました。
脳の萎縮は大したことがないのに、一日中、病院でボーッとしているだけで会話もままならない老人もいました。要するに「頭がいい人」と「そうでない人」は、脳自体が異なるのではなく、脳のトレーニングの量が違うのです。
ということは、あなたも今から鍛えれば、「頭がいい人」と呼ばれる人になることができるのです。
前頭葉を老化させない、男性ホルモンを減らさない
歳をとって日常生活を問題なく過ごせる、いわゆる「頭のしっかりした状態」でいることも大切ですが、これは基本です。
それ以上に、例えば現在まで生きてきた経験を活かして、若い人の相談相手になることができたり、あるいは何か話すと「さすが、和田さん」と言われるような、歳をとってから「頭がいい」と言われるような存在になりたいと思いませんか?
例えば瀬戸内寂聴さんであれば、エッセイを読んでも、こんなことは若い人には思いつかない、やはり、この人の考えは深い、と感心してしまいます。
大企業の歳をとった社長さんなどでも、長い経験に基づいた、若い経営者にはない発言をなさる方もいらっしゃいます。そんなふうな老人になるためには、どうすればいいのか?
単に長く生きて人生経験を積んでいるだけでは、そんな存在になることはできません。そんな優れた老人になるためには、若い人が教えてほしいと考えるような、オリジナルな思考力を持たなくてはなりません。
まず基本的には、前頭葉を老化させないことと、男性ホルモンの量を減らさないことが重要です。そのためには、どうすればいいのか――まずは、前頭葉と男性ホルモン、それぞれの役割から説明していきます。