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“先回り指示”が信頼を崩すことも...部下の士気を高める「任せ方」

伊庭正康(らしさラボ代表)

2022年04月23日 公開

 

できる人が陥りやすい「マイクロマネジメント」

この先での「任せ方」は、部下の習熟度によって方法が違ってきます。高いスキルと経験値を持つ参謀やベテラン社員に適しているのは「委任」。要求の水準を明確にしておけば、基本的に、やり方は任せてしまってOKです。ただしこれは「放任」とは違います。委任と放任の違いは、次の二つの点に現れます。

一つは、委任した相手の現時点での業務内容をいつでも説明できるか、という点。それも「A社との交渉中」という言葉のみならず、進捗状況から、見通しまで答えられることが必須です。

二つ目は、委任した相手が抱える不満・不安・不便、つまり何らかの「不」を感じ取れているかどうか、という点。

両者を把握するには、週1回、30分程度の定例ミーティングを行い、ヒアリングをすることが有効。相手から要望があったときも随時応じましょう。

一方、委任したつもりで全然任せていないという逆方向の失敗も。方針のみならず、方法まで言っている状態です。その最たるものが「マイクロマネジメント」。先回りして注意したり、文書の表現など細かすぎる点まで指示したり、何度も手を止めさせて報告を求めたり。

これは部下の成長を止める悪い方法です。ベテランの自尊心を傷つけて、信頼関係にひびが入る危険もあります。もともと「できるプレイヤー」だったリーダーは、マイクロマネジメントにはまり込む傾向が強くなります。「自分ならこうするのに」と思ってしまうからです。そんなときこそぐっと我慢して、部下のやり方を尊重するよう心がけましょう。

 

GROWモデルで、対話を通じて課題解決

ベテランとは言わずとも、ある程度のスキルは持っている「中堅どころ」には、折に触れてコーチングを行ないましょう。コーチングは、ご存じの通り、「問いかけ」を通して改善を図るコミュニケーションです。

例えば、残業続きの部下なら、こんなふうに進められます。「残業をなくす方法を一緒に考えないか?」と誘い、「何で時間がかかると思う?」と原因を聞きます。そこから、「発注が急に増えたんだね。何があればこなせる?」とリソースを聞き、「そうか、人手か。他には?」「発注の方式を変える、それもいいね。他には?」と選択肢を増やしたうえで、相手にベストな策を選んでもらう。

最後に、部下から「発注フォーマットの定型化にトライしたい」と言ってくれば、納得感があるか意思確認をする。

これは「GROWモデル」と言って、コーチングの世界で多用される対話方式です。実際はこのようにスムーズにいくケースばかりではありませんが、「型」として覚えておくと便利です。

一方、スキルが十分でない部下は、コーチングで問いかけるより、「教える」のがベター。ティーチングが適しています。ティーチングにも、一定の型があります。「5W1H」で業務の内容を伝える、疑問・質問がないかを確認する、教えた内容を復唱させて確認すれば万全です。

ただし、リーダーは最初の指示のみに留めるのがベター。細かいやり方を教えるのは中堅どころに任せましょう。

 

部下が自らやりがいを見出す三つの方法

「習熟度以前の問題だ!」と言いたくなるような未熟さを見せる社員も時にはいます。「固定電話が怖くて取れない若手」などはその一例。しかし、叱っても意味はありません。ここは「そうだよね、怖いよね」と共感を示すこと。内心共感していなくても構いません。

相手が安心感を覚えれば、そのあとに続く「でもな、出ないと仕事は始まらないんだよ」「さあ、何から頑張ろうか?」に応える態勢ができるからです。

はたまた、ルーティンワークにやる気を示さない若手も。「毎日テレアポでウンザリです」と不満を言われたら、次のような2段構えで話しましょう。

第1段階は、「ルーティンではない仕事はない」と教えること。一見クリエイティブな仕事でさえ、資料調べや試行錯誤や納期との闘いを繰り返すルーティンワークなのだ、と。

とはいえ、これで納得することはまずないでしょう。「だって、テレアポ嫌いなんです」という返事が返ってくるはず。ならば、「ジョブクラフティング」の話をしましょう。いかなる仕事にもやりがいを見つける三つの方法のことです。

一つ目は、自分で工夫して楽しくすること。「テレアポを午前中に何本できるかゲーム化する」など。

二つ目は「何のために必要か」という大義を考えること。「君がこれをしなければ、誰がどう困るだろうね?」とイメージを描かせるのもいいでしょう。

三つ目は、話し相手を別の場所に求めること。同じ職種でうまくいっている人の方法を参考にする、などが典型例でしょう。

最初は手のかかる部下も、このようなコミュニケーションを通して必ず成長します。「任せられる部下」へと変貌する未来に、大いに期待しましょう。

 

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