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この憂うつな気分の原因は? 五月病に効く「お釈迦さまの教え」

大愚元勝(住職・株式会社慈光マネジメント代表取締役)

2022年05月24日 公開

「やる気がでない」「連休明けで仕事が辛い」など、五月病に悩む人が多い時期です。憂うつな気分を解消するにはどうしたらいいのでしょうか。僧侶の大愚元勝さんによれば、五月病の原因を知ることが重要だそう。一時的な対処療法ではなく、根本から五月病を治す方法をご紹介いただきました。

 

五月病が悪化してしまう人の傾向

新しい年度が始まって1ヶ月。ゴールデンウィーク明け頃から、私の元には、いわゆる「五月病」の人達からの相談が届きます。五月病とは、新年度の環境変化に心がついていかないがために起こる、憂うつな状態のこと。

身体がだるい、疲れやすい、気力がわかない、物事を悲観的に考えてしまう、よく眠れない、食欲がないなど、人によって様々な症状が現れ、放っておくと悪化し、適応障害や鬱病を引き起こすと言われています。

対処法として「ストレスと上手に付き合う方法を見つけよう」とか、「自分にあったストレス解消法を見つけよう」といったことが提唱されています。

確かに、心の曇りを晴らすために、刺激を受けたりリラックスしたりすることで、気分がリフレッシュすることはありますが、五月病が悪化してしまう人にとって、ストレス解消法は、一時的な対処療法にはなっても、根本治療にはなりません。

なぜなら、「自分に合ったストレス解消法」として、例えば、カラオケやマッサージ、美食や買い物などで気分を紛らわせても、その時間が過ぎればまた憂うつな状態が戻ってきてしまうからです。

環境変化→憂うつになる→ストレス解消法→身体がダルい→ストレス解消法→やる気がしない→ストレス解消法と、無限にこの繰り返しが続いてしまうのです。

そればかりか、「ストレス解消」と称して選んだサービスや行為に依存する人も少なくありません。五月病を悪化させないためには、一時しのぎの対処療法ではなく、根本を治療しなければなりません。

 

五月病の根本原因は、己の感情

では、五月病の根本治療とは何か。

それを知るためには先ず、五月病の根本原因を明らかにする必要があります。五月病の根本原因は、環境の変化ではありません。環境の変化にともなって起こる、「感情の蓄積」です。私たち人間は、不都合なことがあると憤り、理不尽なことがあるとショックを受け、想定外のことがあるとフリーズするなど、思考と行動が感情に大きく左右されます。

自分では「頑張ろう」と思って新年度を迎えたのに、情けないかな、心身がついていかない。その理由は、「自分を律して頑張らなきゃ」という理性よりも、新しい環境で遭遇する小さな「好き嫌い」「楽しい楽しくない」といった感情に非常に強い支配を受けているからなのです。

慣れない職場環境。慣れない服装や通勤ルート。自分に合わない、気を使わなければならない上司や同僚など。それらに無意識のうちに緊張したり、反発したりして、心身が疲労してしまうのです。

そこには、脳の進化の歴史が関係していました。
神経科学者のMacLean博士が提唱した「脳の三位一体説」によれば、脳の構造は (1)脳幹、(2)大脳辺縁系、(3)脳新皮質の三層に分けられます。

(1)の脳幹は「爬虫類の脳」とも呼ばれ、呼吸や血圧、体温調節など、意思とは関係ない、生命維持のための反射的現象を司っています。
(2)大脳辺縁系は「古いほ乳類の脳」とも呼ばれ、欲望や愛情、喜びや怒り、嫌悪などの情動活動を司ります。
(3)大脳新皮質は「新しい哺乳類の脳」とも呼ばれ、言語、抽象思考、想像、将来計画などの思考活動、倫理などを司ります。

この三層の脳のうち、感情を司るのは、「古い哺乳類の脳」である大脳辺縁系の一部、扁桃体という場所です。扁桃体は生命を維持していくために必要な、恐怖や嫌悪、悲しみなどの本能的な感情を司っています。

一方、論理的思考や理性には、「新しい哺乳類の脳」である前頭前野と呼ばれる部位が関係しています。この前頭前野は、大脳辺縁系より後に出来ているため、扁桃体を含む、原始的な大脳辺縁系の活動である情動に、より強力に、思考や行動を支配されてしまうのです。

これが、新しい環境にうまく適応できず「頭では頑張らなきゃいけないと分かってのに、心と体がついていかない」という五月病の根本原因です。

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お釈迦さまが発見した「感情から逃れる」方法

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