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生き方

戦争を起こすのは国家でなく“個人”...いま話題の僧侶が説く「幸福に必要なこと」

大愚元勝(僧侶・株式会社慈光マネジメント代表取締役)

2022年04月27日 公開 2024年12月16日 更新

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、世界情勢は混迷を極めています。誰もが平和を願っているはずなのに、なぜ戦争はなくならないのでしょうか。僧侶である大愚元勝さんに、人が戦争をする理由、また、そこから抜け出して人が幸福に生きるための方法をご紹介いただきました。

 

何が人を戦争へと突き動かすのか?

ロシアのウクライナへの侵攻が止まりません。

日本からウクライナへの飛行機の直行便はありませんが、隣国のオーストリアやドイツへの直行便は12時間程度です。飛行機で半日も飛んだら着いてしまう国で、今、戦争が起きています。

戦争は、今に始まったことではありません。多くの日本人が「この平和な時代になぜ、プーチン大統領は、戦争を仕掛けるのだろう」と考える一方、世界ではずっと戦争が続いてきました。

2001年9月11日の同時多発テロをきっかけに、アメリカは、アフガニスタンを攻撃しました。2003年にはイラクを、2011年には、アルカイダを攻撃しました。

プーチン大統領が武力行使をするのも、今回が初めてではありません。第2次チェチェン戦争、ロシアーグルジア戦争、シリア内戦への介入、クリミア併合、ウクライナ内線支援、カザフタンで起こったデモへの介入など、直接的にせよ、間接的にせよ、これまで何度も軍事力を行使してきました。

誰もが平和に、豊かに暮らしたいと願っています。それなのになぜ、戦争が起きるのでしょうか。

その理由は、人間の飽くなき欲への暴走です。

個人の願いは、家族の健康と、快適で豊かな生活です。国家の願いは、自国の安全と国家の繁栄です。その願いを達成するために、人々が共通して「最重要」だと信じ、追い求めているものは、何でしょうか。

「お金」です。

私たちの誰もが、個人にとって、企業にとって、国家にとって、最大の関心事、最大の心配事、最優先事項が「お金」だと信じている(信じ込まされている)のです。そして、国家が自国の安全と国家の繁栄を守るために、最も大切だと信じていることが、財力と武力です。

大国になればなるほど、莫大な財力が必要となり、それを支える資源を求める。
大国になればなるほど、強大な武力が必要となり、それを支える武器や技術が必要となる。

現在の大国はもれなく、過去に侵略戦争を繰り返して大国になりました。だから大国になればなるほど、他国からの侵略に怯えています。かくして国家は、隣国より少しでも財力をつけ、最先端かつ世界一強力な武力を備えようと躍起になる。覇権国となってその目的(自国の生き残りと繁栄)を達しようとするのです。

これが世界から戦争が無くならない根本理由です。

忘れてならないのは、戦争を起こしているのは、国家ではなく個人であるということです。物理戦争もサイバー戦争も、武器の引き金を引き、ボタンを押しているのは、コンピューターではありません。人間です。

そのように意図して、指令を下し、命令を受けて実行しているのは人間です。そして、被弾して血や涙を流すのも、同じ人間です。なんと悲しい現実でしょう。

地球上で最も発達した脳を持つ人間が、自分の利益のために同じ人間同士殺戮を繰り返す。なんと愚かな現実でしょう。

 

ブッダが説いた「幸福に生きるための条件」

誰もが平和に、豊かに暮らしたいと願っています。誰もが苦を離れて、幸福になりたいと願っています。その願いを叶えるための、最重要事項を「財力」だと信じている。その願いを叶えるための、最良最適手段を、「武力」だと信じている。

本当にそれしかないのでしょうか。今から2600年前のインドに、この人間の愚かさを、鋭く、厳しく指摘した人物がいました。ブッダです。

ブッダは、本当に幸福になりたいのであれば、「追求すべき最重要事項を変えよ!」と啓発なさったのです。

誰もが苦しいのは嫌です。貧しいのは嫌です。
誰もが仲良く、明るく、豊かに、健康に暮らしたいと願っています。

そのためには、金品、健康、良質な人間関係、知識、情報、技術などが必要です。
問題は、豊かに生きるために必要なこれらの条件の中で、「お金」を最重要事項だと信じて追い求めることです。

なぜなら、「お金」を最重要事項だと信じたらどうなるか。時に他を騙したり、他を利用したり、時に他を殺してでも自己の目的を達成しようとしてしまうからです。

では、どうすればいいのか。

ブッダは、幸福に生きるための最重要事項を、「金品」ではなく、「人格の成長」にシフトせよ、と教えられたのです。日々の努力を、「少しでも多くの金品を得られるかどうか」から、「少しでも人格が成長するかどうか」に変えよ、と提案なさったのです。

「お金」はもちろん必要です。けれども、それを最重要事項、最優先事項だと信じ続けることによって、私たち人間は、人間同士で争い続けてしまうのです。

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まずは「自らの身に引き合わせて考える」

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