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社会

デジタル化で生まれた新たな格差...「情報弱者」は放っておいても良いのか

佐藤岳詩(専修大学文学部哲学科教授)

2022年05月29日 公開

 

「海賊版サイト」は万引きと同じ!

数年前、買わないと読むことができないマンガを違法に無料で読むことができる、いわゆる「海賊版サイト」が話題になりました(合法的に無料でマンガを読めるサイトはあり、それとは別の話です)。本当は買わなければ読めないマンガをタダで読むのは、本屋でマンガを万引きするのと同じです。

とはいえ、マンガをタダで読めるなら、読みたくなってしまう気持ちは理解できるのではないでしょうか。しかし、こうした海賊版サイトは、マンガを描いた作者がもつ「著作権」を侵害しているので違法です。

マンガだけでなく映像や音楽などをつくる人たちは、日々、苦労して創作物をつくっています。みんなが海賊版を利用すれば、私たちを楽しませてくれる創作物をつくる人たちにお金が入らなくなり、その仕事を続けられなくなってしまいます。

その結果、私たちは漫画も映像も音楽も楽しめなくなり、めぐりめぐって自分たちが損をするかもしれないのです。それだけではありません。創作物をつくる人の立場になって考えれば、とても悲しい気持ちにならないでしょうか。マンガも音楽も映画もネットで楽しめますが、それらが著作権を侵害していないかを確認することが求められる時代になっています。

 

SNSには悪い大人がたくさんいる!

近年、小学生や中学生がスマホなどを使ったインターネットに関係する事件に巻き込まれることが増えています。スマホを使い始めたら、どうすれば犯罪被害にあわないで済むかを必ず考えましょう。

残念ながら、こどもをだまそうとする悪い大人はたくさんいます。実際、Twitter、Instagram、ひま部、TikTok、KoeTomoなどのSNSで知り合ったおじさんに、「会いたい」と言われて会ってしまい、裸の写真を撮られたり、誘拐されたりする事件が起きています。やさしい言葉をかけられても、それを簡単に信じないことです。やさしい言葉をかけて信頼してもらうのが悪い大人の作戦だからです。

こうした事件に巻き込まれる18歳未満の児童は増える傾向にあります。小学生もいますが、中学生、高校生のほうが多くなる傾向があります。みなさんの多くは、これからのほうが犯罪に巻き込まれる可能性が高くなる年齢になるので要注意です。

スマホは便利ですが、使い方しだいでは犯罪に巻き込まれる入口になってしまいます。もし知らない大人から「会いたい」「写真をおくって」などと言われたら、自分の身を守るためにも信頼できる大人に必ず相談するようにしましょう。

 

「デジタル・ディバイド」は格差の要因

スマホやパソコンといったデジタル機器を使っている人とそうでない人では、インターネットで得られる情報量は大きく違ってきます。

たとえば、あるお店が安売りしている情報をSNSで流していたとします。このとき、そのお得な情報を知ることができるのは、ふだんからSNSを使っている人だけです。

「そんなことを言うなら、SNSをやればいいのに」と思うかもしれません。しかし、スマホを使えない高齢者はたくさんいます。たとえスマホを使っていても、難しくてSNSを使いこなせない人もいます。貧しくてスマホを持てない人もいます。このような人たちは「情報弱者」と呼ばれ、生活のさまざまな場面における情報収集で不利を強いられています。

このように、デジタル機器を利用できる人とできない人との間で生じる格差を、「デジタル・ディバイド」といいます。

デジタル化が進んだ現代における格差の要因になっている「デジタル・ディバイド」は、日本国内だけの問題ではありません。貧しい国と日本のような先進国では、スマホやパソコンの普及率が大きく異なるため、ただでさえ格差があるのに「デジタル・ディバイド」は、その格差をさらに拡大させる要因のひとつになっているのです。

 

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