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社会

「女性優遇」は不公平か? 男女格差が埋まらぬ日本に欠けている倫理

佐藤岳詩(専修大学文学部哲学科教授)

2022年05月31日 公開

人が集まると、そのなかで不公平や不平等が生じる可能性があります。そもそも私たちは日々の暮らしの中で、なにを「平等」と考えているのでしょうか?

たとえば、日本は国際的なジェンダーギャップランキングに置いて、先進国のなかで最低レベルの結果が出ていて、男女平等が遅れている国だといわれています。日本の男女格差の原因はいったいどんなところにあるのでしょうか? 現代社会のなかで生じるさまざまな「平等」「不平等」について、一緒に考えてみましょう。

※本稿は、佐藤岳詩 監修/バウンド 著『こども倫理学 善悪について自分で考えられるようになる本』(カンゼン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「結果の平等」と「機会の平等」の違いとは?

何を平等とするかは意外に難しいところがあります。その「平等」にはいろいろな考え方があります。

「機会の平等」は、不当な原因による格差が存在しない状態のことです。たとえば、大学に行きたいと考える全員が大学の入学試験を受け、合格したら大学に行けるのは「機会の平等」です。

しかし、今の日本では大学の授業料がとても高いため、貧しい家に生まれた人のなかには、大学に受かる実力があっても授業料を払えないために、大学進学をあきらめる人もいます。どの家に生まれるかはこどもの実力や努力とは関係なく、運でしかありません。生まれた家の違いで大学に行ける、行けないという「機会の不平等」があるのが現実です。

一方の「結果の平等」は、「原因を問わずに格差が存在しない状態のこと」です。日本の人口の比率は男女がほぼ半々です。ところが、日本における女性の国会議員比率はわずか10%程度で、女性の意見が反映されにくいといわれています。このように大きな格差がある状態は「結果の不平等」といえます。

このように、同じ「平等」でも、「機会の平等」と「結果の平等」では意味が違うのです。

 

「ポジティブ・アクション」について知ろう!


出所:Inter-Parliamentary Union

日本は男女平等が遅れています。人口の約半分は女性なのに、日本の衆議院に占める女性比率はわずか9.68%(2022年1月1日現在)にとどまっています。また、OECD(経済協力開発機構)が毎年発表している各国の企業の女性役員割合を調査したデータによると、日本企業の役員に占める女性割合はわずか10.7%(2020年)でした。政府は2003年に「2020年までに指導的地位の女性割合30%」を目標に掲げましたが、達成にはほど遠い状態です。

こうした男女格差をなくすために差別される側を優遇することを「ポジティブ・アクション(積極的格差是正措置)」といいます。決まった割合を女性にすることを義務づけたり、具体的な数値目標を掲げたり、能力が同程度なら女性を優先することなどで平等を目指します。

一方、「女性という理由で優遇するのはおかしい」と考える人もいます。たとえば、受験で同じ点数で並んだとき、女性が優先されて合格したら、男性の多くは「不公平」と感じるかもしれません。歴史を振り返ると、男女が大学受験で同じ点数で並んだとき、男性が優遇されることが行われてきた事実も考慮に入れなければなりません。

あなたは「ポジティブ・アクション」についてどう考えますか。

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