「日々ググる」のは大人の勉強法になりうるか?
2022年07月01日 公開
専門家に数ミリでも近づく方法
ネットで知識を増やしていくと、「ある事象」について、かなり詳しくなれる。入門書から得られる知識だけではなく、より専門的な知識や、仕事には直接関連がない情報も知識として得られる可能性がある。
たとえば、「ミューオン」という単語を知っている読者はどれくらいいるだろうか。もし知らなくても、ネットでググることで、少なくとも専門家と素人の間ぐらいのポジションには立てる。
筆者は、「ミューオン」という言葉をNHKBSプレミアムの「コズミック フロント」という番組で耳にし、ネットで調べて自分なりに理解することができた。
ミューオンとは「ミュー粒子」という言葉の英語名で、「素粒子標準模型における第二世代の荷電レプトンである」と説明されている。
われわれの生活には全くなじみのないものであるが、ミューオンは、非破壊検査(機械部品や構造物の有害なきずを、対象を破壊することなく検出する技術)に使用されており、2020年8月に筆者が観た番組では、ピラミッドの内部構造を調べる時に利用されていた。
すると、ミューオンでなぜ非破壊検査ができるのか、ミューオンをどうやって人工的に発生させるのか、ミューオンの質量はどの程度か、いわゆる素粒子論においてミューオンはどういうグループ(族)に含まれるのかなど、次々に疑問が出てくる。
それをまた調べていくと、質量は電子の約206倍で、レプトンという素粒子グループに含まれることがわかる。
「そんなことを知ってどうする?」と問われるかもしれないが、こうしてネットで学んでいると、思わぬチャンスに恵まれることもある。
ミューオンについては、大阪大学の寺田健太郎先生とフェイスブックを通じて"友だち"になった。
寺田先生は、「コズミック フロント」の「8億年前の地球大異変 月が教えてくれたこと」(2021年4月)の回に出演されていた。こちらはテレビを視聴しながらググり、ある程度のことは知っていたため、すぐに話ができた。
すると、寺田先生から「時間があったら研究室に来ませんか?」とさそっていただいた。その話を京大の理論物理学者と、阪大の分子生物学者に話すと、「自分たちも行きたい」という話になり、寺田研究室に各分野のスター教授が集まることになっている(残念ながらこのコロナ禍でまだ実現はしていないが)。
専門家と話をするためには、最小限の知識は必須である。専門知識がなく、本を読む時間のない人は、ググって知識を蓄積するほうが早い。その分野の一流に数ミリでも近づこうとする好奇心があればいいのだ。
今の自分の生活や仕事には直接関係がないように思える知識も、その人の評価や人脈に直結する可能性がある。無駄と思えるような多くの知識を脳内にインプットすることで、その可能性を広げることができるのは間違いない。
そのためにも「日々ググる」を続けるしかないのだ。
1日30分だけググればいい
もっとも、ググるのは、本を読むよりずっとラク。少し時間ができたら、スマホやパソコンで気になるキーワードについてググるだけ。
それを1年、5年、10年と続ければ、とんでもない量の知識の蓄積になる。塵も積もれば宝の山となるわけだ。
塵を積もらせるという話だから、自分の生活リズムを崩したり、わざわざそのための時間を捻出してまでググる必要はない。1日せいぜい30分。主にテレビを観ている時に気になるキーワードを見つけたら、そこからググっていく。これで十分だ。
たとえば、1時間の番組の半分ぐらいはテレビ画面を観ているので、1時間のうち30分ぐらいがググる時間となる。
1日2つ面白いのがあったら、毎日やっていれば、年に350日として、1年で700のキーワード。10年続ければ7000のキーワードの知識が得られる。20年なら1万4000。地道に継続することで、知らないうちに知識が蓄積されていく。
毎日大量のニュースが消費され、時々刻々とニュースのトレンドが変わる。テレビでも情報が追いつかず、われわれはネットで更新される新情報を検索している。YouTubeにも、新しい動画(世界や日本のテレビニュースを含む)が次々とアップされる。
とくに最近は、パンデミックや戦争、自然災害に資源枯渇と非常事態が相次いで起こり、もはや本からノンビリ情報を得るような時代ではないと、多くの人が実感していると思う。今こそ、ネットを介した新しい教養の身につけ方を実践すべき絶好の機会なのだ。