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16歳の提案が動かす台湾...なぜ若い人の意見も通りやすいのか?

講談社編集部

2022年07月23日 公開

 

年齢や性別ではなく「社会をよくしようという意識」が主役

一方、Joinは、国民の方から具体的な政策を提案するしくみです。

もともとは、アメリカ政府が作ったWe the PEOPLEというシステムを参考にしています。これは、こんな法律を作ってほしいという国民の提案に対しての署名が、30日以内にある一定の数に達したときには、政府は必ず、それに対して公式の返答をしなければならない、というものです。

台湾のJoinでは、ひとつの提案に60日以内に5000人以上の賛同者が集まると、政府が公式な回答をすることに決まりました。

開設以来、Joinのサイトには、SDGsに関わる提案、気候変動対策などにさまざまな提案が寄せられましたが、なかでも画期的だったのが2017年の『プラスチック製の皿やストローを禁止すべき』という提案です。

王宣茹という女性が投稿したこの提案には、またたくまに5000以上の賛同者を集まりました。Joinの決まりでは、提案が5000以上の署名を集めたときには、オンラインではなく、必ず提案者を招いてリアルで会議を開くことになっています。

その内容に関わる政府の部署の人たちや、利害関係者たちが、提案者からくわしい提案理由を聞き、話し合いを進めるためです。

このとき、ほとんどの人が、王宣茹という女性は環境問題の活動家だろうと予想していました。ところが、会議室に入ってきたのは、なんと高校1年生でした。

王宣茹は、大人たちの前で、おずおずと提案理由を説明しました。

「いま、世界で毎年800万トン以上のゴミが海に流れこんでいて、そのほとんどがプラスチック製の使い捨て食器だといわれています。こんなことが続いたら、海洋生物はどのくらいのプラスチックゴミを飲みこんでしまうのでしょうか」

結局、彼女の提案は、さまざまな話し合いの末、政府が法案として議会に提出することになりました。そして、2019年から、プラスチックストローの使用は段階的に禁止されることになったのです。この新しい法律によって、台湾では、毎年1億本のプラスチックストローが使われずにすむことが期待されています。

そして、もうひとつ、この出来事で人々を驚かせたのは、まだ選挙権もない16歳の女子高生でも、政治を動かすことができるという事実でした。

vTaiwanやJoinに参加するときには、ハンドルネームやプロフィールの登録が必要になりますが、本名を書く必要はありません。本名を使わずにすむことで、思いきった意見を心おきなくいえるということもあるからです。

ここにも、オードリーの考えがよく現れています。人々が政治に参加しようとするとき、名前や性別、そして投票権があるかどうかにも意味などはない、社会をよくしようという意識こそが主役だ、ということです。

 

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