子育てには親の姿勢が問われます。親が行動を変えないと子育てはいい方向に向かっていきません。専門行動療法士、臨床心理士の奥田健次氏はこう指摘します。では、わが子を自分の翼で羽ばたかせるために親がやるべきこととはなんでしょうか。
※本稿は、奥田健次著『子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決』(TAC出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
子どもは大人になったら本当に家を出てくれるのか
「ニート」が社会問題になっています。職業に就くわけではなく、勉強するわけでもない。30歳、40歳になっても実家で親のスネをかじって暮らし、仕事もすぐ辞めてしまう。そういう人たちのことです。
近年では40歳超の中高年ニートも社会問題化しています。また「引きこもり」も同様に増えています。
ニートの問題は、なぜ最近の若者は社会へでようとしないのか、職業意欲がもてないのかという観点から議論されがちです。テレビなどで学者やコメンテーターがしたり顔で話していますが、原因を社会に求めてはいけません。
問題は親であり、家庭です。ニートでいてもいいという環境をつくっているのは親。また、「引きこもり」という言葉は、本当はまちがいです。「引きこもり」ではなく、「引きこもらせ」です。
よくお母さんがたが、「将来、うちの子が家をでて行ったら、新しい趣味でも始めようと思うんです」などと言います。別に新しい趣味を始めようが、何をしようがかまわないのですが、子どもは本当に家をでて行くのでしょうか。
「でて行こうとしなかったら?」と尋ねると、
「......。大きくなったら、でて行くものでしょう?」
などと答えます。じつはこういう親がいちばん危ないのです。私が納得できる答えはただひとつ、「20歳になったら家からでて行け、といつも言っています」。これだけです。
「成人したら家をでていけ」と4、5歳から伝える
物心がついた頃から、「成人したら家をでて、自分で稼いで暮らすんだよ」ということをくり返し伝えていれば、覚悟ができます。
中学や高校など、将来の進路を具体的に考え始めるもっと前の段階から、親は子どもに伝えておくべきです。いつか家をでて行くのだということを、できるだけ早い段階から言い聞かせておくのです。
6、7歳の頃には、「20歳になったら家をでるのがあたり前なんだ」と考えるようになっているのが理想です。そのためには、小学校からでは遅く、幼稚園の年少くらいから始めてもけっして早すぎることはありません。
子どもが何か悪いことをして、叱る機会があったとします。そういうときに、「もう2年生なのに、そんなことしてたら、将来20歳になって家をでて行くときに、お母さんもお父さんも知らないよ」と、ことあるごとに伝えていくのです。
そして、「20歳をすぎたら、あなたの人生だからね」「20歳になるまでのあいだは、お父さんとお母さんが面倒見てあげるけどね」と、つけ足します。そうすることで、ただ突き放しで言っているのではないと、子どもにも伝わります。
こうした会話をくり返していれば、子どもは「うちの親、また同じこと言ってるわ...」とあきれつつも、年齢とともに現実味を帯びて感じられるようになってきます。親が本気で言っているんだと子どもにわからせるのが、いちばん大事なことです。
でも、これを18歳になってから言いだしたらどうでしょう。子どもからすれば、「あと2年しかないのに、なんで急にそんなこと言うの」となります。
さらに、将来について何も言わない場合はどうなるでしょう。子どもは「家をでて自立する」という発想さえもてないまま大人になっていきます。