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中野区で文学賞? 選考委員の映画監督が語る「映画化される小説の特徴」

篠原哲雄(映画監督・東京中野物語2022文学賞最終選考委員)

2022年08月02日 公開 2024年12月16日 更新

先日発表された芥川賞・直木賞は文学賞の中でも知名度の高いものといえる。小説を書く人、物語を読む人たちなら誰しもあこがれる賞なのではないだろうか。しかし、実は「文学賞」といわれるものは、それ以外にも数多くあり、自治体が町おこしのために設けている文学賞も多い。

今年、中野区観光協会が中心となって創設された「東京中野物語2022文学賞」(https://nakano-story.jp/)もその1つだ。

中野区に25年住み、中野区から新たな作品を生み出すことを楽しみにしている、最終選考委員の映画監督、篠原哲雄さんにお話をうかがった。

 

中野発の新しい物語に対する期待

――なぜ、今回、文学賞の最終選考委員になられたのですか?

私が中野区在住ということから、中野で何か新しい文化的なもの作りをして発信もしていきたいけれど、映画人として何か一緒に出来ないかという話がありました。

私自身の話になりますが、20代の頃(1980年代後半)は助監督をやりながら自主映画の登竜門である「ぴあフィルムフェスティバル」に公募していました。2度目の応募作で運良く小さな受賞に至ったので、そこから道が開けたと言っても過言ではありません。

今回は映画に特化したものではないので、脚本の公募というよりも広く文化を発信するという発想でのコンペティション的なものが出来るといいよねという話になり、それが文学賞発足に至りました。

私自身も映画化にできそうな原作を探すために小説を読んだり、人から強く勧められた小説が映画化になった例もありますし、常に物語を求めているところはあります。

自分自身から生まれるオリジナルもいいですが、人が紡ぐ物語を映画という場に広げていく仕事で、より面白い作品に至ることは多々あると思っています。つまり映画になる題材は常に探していますし、新しい話、面白い話には飢えているわけです。

ですから、この文学賞を中野でやろうという話がまとまった際にはとても嬉しく思いましたし、自分も映画監督という立場で選考にも関わることが出来そうで尚更その意義を感じている次第です。

どんな物語に遭遇するか、今から胸がワクワクしています。新しい話を渇望していますからね。

 

「文学」と「映画」で求められるものは同じ

――映画化するためにどういう作品を求めていますか?

最終選考委員は4人なので、私の権限は4分の1しかないのはわかっています。その上での発言なのですが、できれば映像化できるような作品と出会いたいですね。

私の代表作と言われるのが「月とキャベツ」「地下鉄に乗って」「花戦さ」などです。ここで列挙するのは多すぎて避けますが、過去40作品以上撮ってきました。ジャンルも歴史ものから、ファンタジー、青春群像、恋愛映画などありとあらゆるものです。

だからと言っても、なんでも屋という訳ではないです。世に出す価値のある話をしっかりと世に出したいと思っているのです。だからジャンルは問いません。

じゃあ、映画化になるような話ってどんなものか? ということですが、人が見て納得出来るようなテーマが見出せること、でしょうか。テーマにも様々ありますが、ひとことでは言えなくても、これが伝えたいというものが見出せること。伝えたいことはオーソドックスでもいいのです。

そして出来るだけ新しい見解が感じられること。これまでにないテーマやジャンルだと新しい見解も求められると思いますが、それは社会に起きうる様々な問題から何かをうまく抽出できたらの話だと思います。

これまでに語られてしまったテーマでも切り口が新しいとか、語り口が新鮮であることによって読む側の想像力を掻き立てることもあると思います。僕はこういう質問に対してよく言うのは「きらめき」と「ときめき」を感じる物語が読みたいなと。

それは、ちょっと青春の"ギュッ"と感じた瞬間などを描くということかもしれないけれど、その人にしか描けないものが感じられたら、それはもう読まずにいられない楽しみを感じるわけで。

その人にしか書けないオリジナリティーや独自の世界観とがある、いわばそういう作品ほど「きらめき」や「ときめき」は感じるものだと思うのです。今こうして色々な切り口を言ってしまっていますがこれすなわち映画にも求められていることで自分自身への問いかけでもあるなあと思ったりしているのですね。

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不自由な制約の中でこそ自由な発想が生まれる

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