人とのコミュニケーションに息苦しさを感じていませんか? その原因は、あなた自身の「自分への向き合い方」にあるかもしれません。
※本稿は、石原加受子著『「あの人とうまく話せない」がなくなる本』(PHP研究所)から一部を抜粋し、編集したものです。
自分の気持ちを大事にする
うまくコミュニケーションをとれない人たちは、「なぜ、あの人とうまく話せないのか」、あるいは「どうして、自分の気持ちが伝わらないのか」と悩みます。
けれどもそれは、「関係性」で起こっている可能性が高いでしょう。まさに自分が、他者を気にしてそんなふうに考えてしまうせいで、相手を緊張させたり気を使わせたり、あるいは警戒心や不信感を抱かせてしまっています。
相手を気にすると、逆に、自分自身の微妙な言動が発信源となって、相手の心を閉ざさせてしまいます。
しかも、特定の人を意識すれば、自分がいっそう話しづらくなるだけでなく、その意識をキャッチして、相手のほうも息苦しさを覚えるでしょう。相手が、その空気を打ち破るとしたら、かなりの勇気を要するでしょう。
そうやって、「心が通じ合う」コミュニケーションを難しくしていくのは、自分自身であるかもしれないと考えることは、自分にとって非常に有益なことです。
なぜなら、こういった問題は、自分が、自分と向き合っていないときに起こるからです。自分と向き合っていないと、自分の心が何を感じているかに気づけません。それが、日常の些細な場面でも顔を覗かせます。
例えば職場であなたがパソコン作業をしているときに、上司が、「これ、お願いするよ」と予定外の仕事をあなたに依頼してきました。
あなたは、「はい、わかりました」と答えつつも、気分的にはイラッとしました。どうしてあなたはイラッとしたのでしょうか。
それは、「自分のパソコン作業を中断して、上司の仕事に取りかからなければならない」と思ったからでした。
上司は決して、あなたに押しつけてきたわけではありません。「自分の作業を中断して、上司の命令に、従わなければならない」そう思ったのは、あなた自身です。
自分の作業を中断させられたと思い込んでいるあなたは、不快な気分で上司からの仕事をすることになるでしょう。
日常生活では、こんなパターンのやり取りが、圧倒的多数を占めています。しかも、こんな反応は"自動的"になっています。こんな自動的反応が、自分と向き合っていないということです。
日頃から、自分と向き合っていれば、自分の感情にすぐ気づきます。上司の仕事よりも、自分の仕事を優先する自由もある、ということも心得ています。
自分の気持ちを大事にできれば、「いまやっている作業が、あと2時間ほどかかります。その後でもよろしいでしょうか」などと、明確な言葉で尋ねることができるでしょう。
「上司と部下」の関係性でいうと、あなた自身がそんな「スッキリ感」で答えれば、上司のほうも、「わかった。じゃあその後でいいから、頼んだよ」と、快く承知する可能性が高くなるでしょう。
これが、向き合うということであり、また、自分の感情を基準にして、判断するということでもあります。自分と向き合って初めて、「自分の気持ちを優先していい。その自由があるのだ」ということに気づくのです。
【著者紹介】
石原加受子(いしはら かずこ)
心理カウンセラー。「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。「思考・感情・五感・イメージ・呼吸・声」などをトータルにとらえた独自の心理学スタイルで、「性格改善、親子関係、対人関係、健康」に関するセミナー、グループ・ワーク、カウンセリング、 講演等を行い、心が楽になる方法、自分の才能を活かす生き方を提案している。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。
著書に『傷つくのが怖くなくなる本』『「女子の人間関係」から身を守る本』(以上、PHP文庫)、『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(あさ出版)などがある。