経済の停滞が指摘される一方で、日本の国際的な評価は高まっています。
2023年の「国家ブランド指数」では、日本がドイツを抜き、調査対象60カ国のなかで初めて1位を獲得。訪日外国人客数も2025年に過去最高を更新しました。
世界の人びとを引きつけるのは、アニメや漫画、食文化だけではありません。伝統工芸や建築、自然、精神性にまで広がる日本文化の奥深さが、その魅力を支えています。BIOTOPEファウンダーでストラティジックデザイナーの佐宗邦威氏が、「第三のジャポニスム」ともいえる日本人気の実態と、それを経済成長につなげる可能性を読み解きます。
※本稿は、佐宗邦威著『ジャパン・アズ・オンリーワン』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「国のイメージ」が60カ国中1位になった

2023年のアンホルト・イプソス「国家ブランド指数」において、日本はドイツを抜いて1位になった(上図)。この調査は、60カ国の「国のイメージ」を、20の調査対象国に住む18歳以上の約6万人へのオンライン調査で測ったものだ。測定軸は、輸出、ガバナンス、文化、国民性、観光、移住・投資の6分野。2019年の5位から着実に順位を上げ、6年連続1位のドイツを抜いて日本が1位になった。つまり経済力では停滞が語られる一方で、日本に対する国際的なブランド力は非常に強いのだ。私が世界を回って実感した「日本は今、人気だ」という感覚を裏付ける結果だ。
この調査で日本は、輸出、ガバナンス、文化、国民性、観光、移住・投資の6分野の調査項目すべてでトップ10入りしている。また、国を人格に譬(たと)えた印象では、「創造的」で1位、「有能」で2位となった。さらにブランド指標の集計結果には含まれないが、2023年に追加された補足的な評価項目のうち、「この国で製造された製品を信頼している」「この場所は他のどの場所とも異なっている」という2つの項目でも1位になっている。
日本は「信頼できる製品を生む国」であり、「他では得られない体験がある場所」として見られていることがうかがえる。
こういった日本のイメージの良さは、インバウンド観光にも表れている。日本政府観光局によれば、2025年の訪日外国人客数は約4268万3600人となり、過去最高を更新した。コロナ禍後の航空便の回復、アジアを中心とする旅行需要の戻り、円安による割安感など、複数の要因が重なったという理由もあるだろうが、どこかに旅行したい気持ちがあってもイメージが悪い国に対しては、割安でも行かないはずだ。円安は日本人気を生んだ原因ではなく、すでにあった日本への関心を、旅行で訪れる機会や購買へ転換しやすくしたにすぎない。
言うなれば、今は「第三のジャポニスム」といえる状態なのだろう。
この「第三のジャポニスム」の特徴は、日本語がそのままアルファベットで、世界各国の言葉にそのまま取り入れられている点だ。Sushi、Zen、Kintsugiなどは当然としても、Izakaya、Omakase、Yuzu、Katsu-curry、Dashiなど、日本にあるユニークなものが、その文化的な文脈を参照しながら、時に意味を変え、その土地で使われているのだ。
しかし、いくらイメージがよく、日本の文化が諸外国の生活に浸透しているといっても、それが単に短期的な流行として消費されるだけで終わってしまうのではあまりに惜しい。「第三のジャポニスム」旋風を日本経済発展へとつなげていく必要があるのだ。
奥行きを持った日本のイメージ

では、外国人が日本に抱くイメージとはどんなものだろうか。それをまとめたのが上の表だ。
まず、日本に対しての興味・関心度が低い層でも知っているのが、富士山、寿司、侍といった日本の典型的な伝統文化のイメージだ。日本についてほぼ何も知らない人でも知っているものだろう。日本に対しての興味・関心度がそれより少し高まった多くの一般人の層が持つイメージは、アニメ・ゲーム・漫画だ。世界ではアニメ・ゲーム・コミックの頭文字を取って「AGC」と呼ばれている。この辺りは、世界ですでに知名度を獲得しつつあるといって良いだろう。
その次に興味・関心度が高まった層が、イメージするのが「日本食」や「日本酒(SAKE)」だ。この食文化によってもっと興味を持った層がイメージするようになるのが、日本の包丁をはじめとする調理器具や文房具、さらに世界で評価が高まっている建築やインテリアだ。これらは質が高いものとして、世界から非常に高く評価されている。この道具類についての興味・関心が、南部鉄器や会津漆器などの伝統工芸品につながり、さらにコム・デ・ギャルソンや、ISSEY MIYAKEなどのハイファッションや、定番としての無印良品やユニクロなどの日本のファッションにつながっていく。
さらに日本通の人は、屋久島をはじめとした日本の地方の自然の景観や、ニセコや白馬などに代表される大自然を背景にアウトドアでのスポーツ体験を楽しんだり、さらにはZenやIkigaiといったスピリチュアリティ的な要素にも興味を持ち、関心を深めていく。
つまり、世界の人々が日本に対して持つイメージは、表面的なものから精神性までと、非常に幅広く、奥深いのだ。
この現象は、KpopやKコスメで今人気を博している韓国とは少々異なる。韓国は欧米から見れば日本と同じ東アジアの国で、文化政策を1980年代から熱心に行っているが、ダンス、パフォーマンス、コスメなどの文化資源を前面に打ち出してはいるものの、まだそれらは日本で言えば「アニメ、漫画、ゲーム」の段階だ。その奥にある食文化、歴史、文学、映画、儒教文化、植民地体験、フェミニズム、現代アートなどのイメージは欧米にはまだ浸透していない。それがアンホルト・イプソス「国家ブランド指数」での結果の差に表れているのだろう。









