5年で電気自動車の量産に成功した「尖ったものづくり」とは
2018年10月22日 公開 2023年10月04日 更新
京都大学のプロジェクトで電気自動車づくりに挑む
そんな折、「ある家電量販店が自動車の販売を手がけるらしい」との情報を得た。小間氏はその時、「電気自動車」というキーワードが脳裏に浮かんだという。
「従来のガソリンエンジン車は、膨大な開発費用がかかるので、大きな自動車メーカーしかつくれないと考えられてきました。また、数多くの複雑な特殊部品を用いるため、部品メーカーを系列化する垂直統合型のビジネスモデルになっています。
しかし、電気自動車の動力源はバッテリーとモーターで、それらを制御するのはデジタル技術。となると、電気メーカーが扱ってきた製品だけでつくれます。
ならば、たとえ小さな会社でもアウトソーシングをフル活用することで、開発できるのではないか。そして自動車産業も家電と同じように、アイデアで勝負するようになるのではないか。将来的に電気自動車の時代になるのは確実だから、ニーズは必ずある。そう予想しました」
ちょうどその頃、京都大学副学長を務めていた松重和美教授の講義で、「京都に集積しているテック企業の技術を集めれば、電気自動車がつくれる。京都大学にはオリジナルの電気自動車をつくるプロジェクトがある」という話を聞いた。その名は、「京都電気自動車プロジェクト」。主導する松重教授は、京都大学でベンチャー支援を行なう組織を立ち上げ、産学連携を推進してきた第一人者である。技術力に優れた京都企業とのネットワークがあった。
将来起業して電気自動車をつくりたいと考え始めた小間氏にとって、このプロジェクトが魅力的でないはずがない。早速参加し、憧れの「ものづくり」の世界に足を踏み入れた。このプロジェクトが、後に設立するGLMの母体となる。
他のプロジェクトメンバーとブレインストーミングを何度も重ね、ベンチャー企業が電気自動車をつくるための新たなビジネスモデルを徹底的に追求した。そこで生まれたのが、GLMの経営方針となっている「水平分業型のビジネスモデル」だと小間氏は明かす。
「プロジェクトごとにサプライヤーを集めて、水平分業のかたちで電気自動車をつくれるのではないか。また、大量生産ではなく、少量生産で高付加価値のクルマがいい。それなら自社工場がなくても可能だ。高付加価値で希少性のあるクルマなら、価格が高くても売れるだろう、といった考えがまとまっていきました。そうして電気自動車をベンチャー企業がつくる、という構想の基本ができたのです。むしろベンチャーだからこそ、ワクワクするような“尖ったものづくり”ができると確信しました」