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Voice1月号書評から

『Voice』編集部

2010年12月17日 公開 2022年08月17日 更新

悪名の棺 笹川良一伝

『悪名の棺 笹川良一伝』

工藤美代子 著
幻冬舎/1,785円(税込)
笹川良一氏といえば、1970年代半ばのテレビCMでの姿を思い出す人もいるだろう。曰く、「人類みな兄弟」「一日一善」......。「政界の黒幕」との世評も相まって、CMでの氏の姿は、不気味な怪しさを醸し出していた。本書は、その氏の知られざる素顔を余すところなく描いた傑作評伝である。
 生前に氏に貼られたレッテルは、「ファシスト」「ギャンブルの胴元」など、ロクなものがなかった。しかし、並外れた才覚と財力で人を操り、世の悪名を気にせず、天下国家に尽くした氏の生涯からは、むしろある種の愚直さ、清列さすら感じられる。政治家も経済人も、どこか矮小化した感のある昨今、こうした規格外の人物が求められているのかもしれない。(T・N)

アメリカにはもう頼れない

『アメリカにはもう頼れない』

日高義樹 著
徳間書店/1,470円(税込)
 尖闇諸島での事件をきっかけに「アメリカは本当に日本を守ってくれるのか」ということが真剣に問われることとなった。だが、著者は警鐘を鳴らす。中間選挙で大敗北を喫した米軍最高司令官=オバマ大統領の弱腰ぶり、孤立主義の高まり、消えゆく「日本びいき」......。本書が明白に浮かび上がらせるアメリカの内実と世界の現実を知らずして、日本の今後の戦略は語れまい。(T・K)

小鳥と柴犬と小沢イチローと

『小鳥と柴犬と小沢イチローと』

上杉 隆 著
ビジネス社/1,260円(税込)
 「政治関連の書籍は何やら難しい」という概念をひっくり返す、著者本人も認める"脱力"政治本。いまの日本政治を動かす主要人物と、彼らにまつわるエピソードを、簡潔かつユニークに描いた一冊。
 政治の現場のもっとも奥深くにもぐりこみ、どこの組織にも属さない著者だからこそ書ける、通常表には出てこない政治家の姿や肉声に、政治に対する興味関心を一気に掻き立てられる。(E・T)

ツリーハウス

『ツリーハウス』

角田光代 著
文藝春秋/1,699円(税込)
 新宿の、とある小さな中華料理屋「輩翠飯店」。ある日、初代店主だった祖父が息を引きとった。満州帰りの祖父母の戸籍には、父や叔父・叔母のほかにも数人の子供の名前。「帰りたい」と泣く祖母を連れ、何かに惹かれるように満州へと旅に出る――。
 戦争を知らない孫がみた、戦争を生き抜く祖父母の姿。戦中・戦後・平成と、必死に駆け抜けてきた家族三代の、激動の物語。(M・T)

成り上がり

『成り上がり』

江上 剛 著
PHP研究所/1,785円(税込)
 銀行業の元祖・安田善次郎について書かれた書籍はあまたあれど、彼の前半生、つまり善次郎が一庶民から日本一の金融王になる時点までに焦点を絞って描かれたことが本書の特徴だ。多くの失敗・挫折に不屈の精神で挑み続け、幕末から大正の激動期に"成り上がった"怒涛の人生が、元金融マンの著者の手によって色鮮やかに甦る。日本経済再興への示唆に富んだビジネスマン必読の書。(T・S)

Voice 2011年1月号

Voice 2011年1月号

北朝鮮による韓国砲撃、ロシア大統領の北方領土訪問、燻り続ける尖閣問題......。このところ、日本周辺では一気に緊張が高まりつつあります。はたして、世界はいまどこに向かいつつあるのでしょうか。そこで今回は、混沌とする覇権の行方を読み、日本の採るべき戦略を探る総力特集を組みました。もう1本の特集は、「2011年の『消費倍増』計画」と題し、新たな需要を掘り起こす秘策を探りました。今月号も、あなたの知性と好奇心をくすぐる論考が満載です。ぜひご一読ください!

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