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社会

終戦後、朝鮮半島から命を賭して帰国した「祖母の記憶」

鬼塚忠(作家)

2020年08月14日 公開 2022年07月04日 更新

 

過去の事実が警告する「現代の危うさ」

もちろん、一人でも多くの方に祖父母の実話を基にした物語を読んでほしいのですが、それと同時に、ありきたりかもしれませんが、今の日本が戦争に向かって欲しくないと思います。

祖母の実体験を聞き、そこを柱に物語を作ろうと思い、当時の資料を読み漁ったのですが、戦争って、長い時間をかけて大義が熟成され、どこかで発火するものと知りました。

その間、一般人は社会が戦争に向かっていると気づきません。戦争は、国や軍、財界人など強欲な人たちがおこしているような文脈で語られることが多いですが、むしろ国民が起こしていると言っても言い過ぎではないと思います。

新聞社が、敵国とされたアメリカを強気な論調で批判しないと国民が不買運動を起こしました。質素倹約を是とする「欲しがりません、勝つまでは」などスローガンを根拠にした自粛ポリスがいました。今の社会の雰囲気と似ています。

今の日本の状況は戦争に向かっていると思えてならない。今の状況では近隣諸国と衝突は避けられない。だけど、それでも実際の戦争は避けるべしだし、巻き込まれるべきではない。戦争をしないようにするのが政治家の仕事です。この本を書き終えて、そんな思いがあふれました。

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