読者が選ぶビジネス書グランプリ2026 混迷の時代に「選ばれた本」の共通点
2026年02月12日 公開 2026年02月12日 更新
本の要約サービス「flier」とグロービズ経営大学院は、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2026」の受賞作品を発表しました。本グランプリは一般投票で決定するビジネス書の年間アワードで、今年で11回目を迎えます。
エントリーされた133冊の中から選ばれた受賞作品と、著者のコメント、フライヤーCEO・大賀康史氏による総括を紹介します。
「読者が選ぶビジネス書グランプリ2026」受賞作品
【総合グランプリ/経済・マネー部門賞】
『億までの人 億からの人』(田中渓/徳間書店)

田中渓氏の受賞コメント

『億までの人 億からの人』は投資術の本ではなく、前職のゴールドマン・サックスで働くなかで出会った数多くの富裕層を観察し、彼らがお金とどう向き合い、どのように意思決定しているのかを掘り下げて書いたものです。
経済・マネー部門賞をいただきましたが、私が伝えたかったのは「インスタントにお金を増やす方法」や「今日から何をすべきか」といった話ではなく、腐らない議論を届けたいと思っていたので、本の半分ぐらいはウェルビーイングについてのお話が詰まっています。
タイトルの印象から「手に取りづらい」という声もありましたが、それでも多くの方に読んでいただくことができました。長く使える内容を書いたつもりですので、この機会に、より多くの人に届けばうれしいです。
【イノベーション部門賞】
『1つの習慣』(横山直宏/すばる舎)

横山直宏氏の受賞コメント

この本では「楽しむ」ということについて書きました。楽しまずに一生懸命頑張っても上手くいかない。しかし、楽しめば上手くいくということを、1つの習慣としてお伝えしています。
読者の方からも、頑張って働いてきたものの、気が付いたら家族との関係が悪くなっていた。しかし本を読んで、楽しむことを忘れていたことに気づいてから、人間関係も業績も良くなった、という感謝の言葉をいただきました。そのことで、本の力が持つ素晴らしさを改めて感じています。
多くの人が人生を変える本に出会い、もっと人生を楽しめる人が世界に増えたらと思っています。
【マネジメント部門賞】
『冒険する組織のつくりかた──「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(安斎勇樹 /テオリア)

安斎勇樹氏の受賞コメント

これまでのマネジメント論は、「戦略」「戦術」という言葉をはじめ、あまりにも戦争的・軍事的な発想に偏りすぎていたのではないかと感じていました。そこで、軍隊型マネジメントから脱却し、人間が持っている好奇心をもとにしたマネジメント論を、『冒険する組織のつくりかた』で提案しました。
出版した当初は青臭い考えだと思われるのではないかと不安もありましたが、今回、読者の方々が「これを広めたい」と投票してくださったのだと思い、とても勇気づけられました。新しいビジネスのやり方をもっと広めていくために、これからも頑張っていきたいと思います。
【自己啓発部門賞】
『科学的に証明されたすごい習慣大百科』(堀田秀吾/SBクリエイティブ)

堀田秀吾氏の受賞コメント

本づくりは舞台講演のようなものだと思っています。著者は俳優で、編集者さんはプロデューサー。私は自分のことを「エビデンス職人」と呼んでいるのですが、編集者さんが投げてくださったテーマに沿って、エビデンスを集めて、編集者さんと一緒に形にしていく作業をしています。
そして、舞台美術はブックカバーデザイナーさん、集客は広報や営業の方、そして書店さんが担ってくださっています。こういった方々の努力で興行が始まり、お客さんが気に入ってくださったら口コミを広めてくださる。みんながチームとして一つになったときに、ヒットが生まれるのだと思っています。
ですので、自分がやっていることはほんの少しだと思っています。投票してくれた読者の皆さんに感謝したいと思います。
【リベラルアーツ部門賞】
『お金の不安という幻想』(田内学/朝日新聞出版)

田内学氏の受賞コメント

投資の話が今すごく盛り上がっている一方で、僕としては過熱しすぎていると感じています。この2年で、「早く投資しないといけないのではないか」と、お金の不安を持っている人が増えていることを感じていました。
SNSでも投資で稼いでいる人の話や、「物価高対策・インフレ対策に金融商品を買いましょう」といったことに注目を集めようとしたり、お金の不安を煽る情報がとても多いです。
金利によってお金を増やそうとするけれど、その金利も誰かが払っているものです。お金を増やすには、誰かからお金を取らなければならない。そうすると分断を煽ることにもつながってしまいます。
変化する社会の中で生き残るためには、戦うのではなく、協力しなければならない。そういう思いからこの本を書きました。
【ビジネス実務部門賞】
『人は話し方が9割 2』(永松茂久/すばる舎)

永松茂久氏の受賞コメント

『人は話し方が9割 1』をたくさんの方に読んでいただいたところ、質問や悩み・ご意見が山のようにあったんです。そこで、『2』では『1』に書けなかったことや、『1』の内容を深掘りして作らせていただきました。
本ってすごいと思うんです。知識の伝達というところもですが、本は夢と縁で出来ていると思っているんですね。たくさんの作り手の夢、編集者の夢、いろんな思いで出来ている。そして、本を読んだ読者の皆さんの間でもたくさんの縁が繋がっていく。ものすごいツールだなと思っています。
これからもたくさんの夢と縁を繋いでいくような本を書いていきたいと思います。
<特別賞>
【ロングセラー賞】
『【改訂版】本当の自由を手に入れるお金の大学』(両@リベ大学長/朝日新聞出版)

142万部突破の『お金の大学』が超・パワーアップ! 「新NISA」などの金融制度にも完全対応。さらに「証券口座やクレカ、銀行などの選び方」「超危険な金融商品リスト」など、新規内容も50ページ以上追加。実践しやすいお金の教養がてんこ盛りの一冊!
朝日新聞出版 編集担当者の増田侑馬さん
<特別賞>
【グロービス経営大学院賞】
『アフターAI』(シバタナオキ/日経BP)

生成AIは、もはやバズワードの時代を越え、実装の巧拙が企業価値を左右する段階へと突入しました。
著者のシバタナオキ氏は、投資家としてシリコンバレーを中心に1000社超の生成AIスタートアップを精査し、数十社へ投資してきました。さらに本書には、日本企業の現場で生成AI導入に取り組むトップランナーたちの生の声が収録されています。
日経BP担当編集者の進藤寛さん
フライヤーCEO・大賀康史による「ビジネス書グランプリ2026」総括

2025年は、世界的な混迷がいっそう色濃くなった一年でした。長期化するロシア・ウクライナ戦争や中東情勢の緊迫化、トランプ大統領再選後の関税政策をめぐる緊張関係など、国際社会は難しいかじ取りを迫られているように見受けられます。
かつてSDGsが「世界共通の正義」として定着したように思われましたが、今は「正義」そのものの輪郭が見えにくい時代に入ったようにも感じられます。
一方で、日本経済は日経平均株価が5万円を超え、新NISA制度の浸透も相まって、株式等への投資のプレゼンスが高まっています。
AI分野では、LLMを中心とした生成AIの進化が続き、次の成長領域としてAIロボティクスにも注目が集まっています。ChatGPT一強の時代は終わり、Geminiなどの有力サービス、中国発AIの台頭もあり、AIの競争は一気に激化しました。自動運転の商用化も目前に迫り、経済や雇用にどのような影響をもたらすのか、多くの人が期待と不安の入り混じった感情を抱いています。
歴史上でも例を見ないスピードで技術トレンドが変化するなかで、「私たちはどのように生きるべきなのか」「どうすれば幸せになれるのか」その答えが見えにくい時代に、世界も日本も突入しているように思えます。こうした時代の空気は、今年のビジネス書にも色濃く反映されていました。
そして、今回のビジネス書グランプリのキーワードは、「不安ととまどいの時代に求められる、ゆるぎない指針」であると考えられます。生成AIやSNSによって誰にとっても正しそうに見える正解らしきものがあふれています。
しかし、それが本当に自分にとって価値のあるものなのか確信できないまま情報に触れ続けることに、多くの人が疲れを感じています。だからこそ今、人は「ゆるぎなく信じられる考え方」や「人生の軸」を求めているのではないでしょうか。













