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「読んだ本の内容」を忘れなくなる“記憶のテクニック”

池田義博(記憶力のグランドマスター)

2021年03月02日 公開 2022年10月17日 更新

読書

読書に心理学を利用する

今回の読書法もメインの目的が本の内容を覚えてそれを活かすということにあります。それはつまり「学習」の要件を満たしていることになります。

ここにおける「合格」とは本の内容が自分のものになる、使える知識として実際に活用することなのでしょう。ここでも先ほどの「試験勉強の隠れた王道」の考え方を使うべきだと思います。

そしてこのやり方にはさらに隠れた秘密があるのです。実はこのやり方、学習心理学的にも非常に理にかなった方法だったのです。

心理学上、記憶に関わる性質の中に「プライミング」というものがあります。プライミングとは以前に経験したことが、その後の認知や行動の促進に対して知らないうちに影響を及ぼす効果のことをいいます。

例えば前の日の夜にテレビでラーメン特集を見ていたとしましょう。その記憶が無意識に頭の中に残っていることにより次の日外食したときに何となくラーメンを選んでしまうといったような現象のことです。

このプライミングに関する効果は他にもあります。「サバイバル効果」などもその一種です。実験によりその効果が報告されています。

最初に参加者には、例えば無人島などに一人取り残されたなどのサバイバルが必要なシチュエーションを想像してもらい、その中に自分がいることをイメージしてもらいます。

それをした上で、実験参加者には無作為に選ばれた「ジュース」「ドア」「ガラス」「自動車」…などの単語が次々に表示されます。出てくる単語に対して、それらがサバイバルをするときに役立つかどうかを判断することが求められます。

その後出題された単語をいくつ覚えているかという記憶のテストを行ったところ、サバイバル状況を事前に想像していない参加者に比べ、自分がサバイバル状況に置かれていると想像した参加者たちの方が記憶している単語の数が多いという結果になったのです。

その他にも「ザイアンス効果」といわれるものもある種のプライミングといえるでしょう。意識的にテレビのCMを見ていたわけではないにもかかわらず、何度も繰り返しそのCMをテレビで見ていることで、お店に行ったときに何となくその商品が目に飛び込んできてつい買ってしまったというような現象のことです。

 

100m走では反則だが、読書でフライングは超絶パワーを生む

要するにこれらの現象に共通していえるのは、あらかじめ特定の情報を何度も見たり聞いたり、またその情報について考えたり、想像したりすることが後になってからの記憶や、情報選択といった認知能力に影響を及ぼすということです。

つまり目にした情報が、事前に意識に入っている情報と少しでも関連する要素が含まれている場合、よりその部分を際立たせ、そしてその情報に対する記憶の定着も自動的に促進するという効果があるということです。

しかし試験勉強であれば、過去問や模擬問題集のような教材も存在しますが、この考え方を読書にはどう取り入れればよいのでしょう。これに関しては文明の利器を借りることにしましょう。

インターネットを利用するのが一番です。今ではネット上にたくさんの人がブログや読書管理のWEBページなどで読んだ本の感想や、中身のポイントを書き込んでいます。一般人以外にも本の専門家が書評サイトや雑誌などで本の紹介をたくさんしています。

小説などのエンターテインメント性のあるコンテンツであれば、あらすじや結末など、ネタバレするようなものは当然シャットアウトした方がよいでしょうが、実用書やビジネス書といった類いなら逆に事前の情報収集はした方が利点があるということです。

もちろんすでにその本を読んだことがある知り合いから直接ヒアリングするなどの方法もよいでしょう。

ただ一つ気をつけなければいけないことがあります。それはあまり他人の意見をそのまま鵜呑みにして意識に取り込みすぎないことです。あくまでも人の意見として参考程度にとどめておき、変なバイアスをかけないでおくことが重要です。

陸上競技ではフライングは反則行為ですが、読書法においてはどんどんフライングして予備知識に接するべきです。

 

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