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驚くほど印象が良くなる! 魔法の「声トレ」…伝わる声はどうやって作る?

2015年05月25日 公開
2023年05月16日 更新

篠原さなえ(ナレーター)

「相手の心をなかなかつかめない」
「話す内容がうまく伝わらない」
「なんど呼びかけても振り向いてもらえない」
……こうした問題は、実は「声」そのものに原因があるかもしれない。
相手が心地良く聞いてくれる声は、大人になってからでも訓練して身につけられる。
その方法を、声のプロ・篠原さなえ氏にお聞きした。
 

話し始めから終わりへと、声の高さを落としていく

ビジネスマンに最も多い声の悩みは、「声が低すぎて根暗な印象になる」、あるいは、逆に「声が高すぎて軽薄な印象になる」というものでしょう。この二つの問題の根は実は同じ。ですから解決法も同じです。カギは「アクセントとイントネーション」。

日本語は、アクセントを「高低」で表現し、語尾に行くに従って、だんだん下がっていく言語です。印象の決め手「イントネーション」も、高低で表現します。



この図のように、高いところからリズミカルにカーブを描きながら低くする。これが、聞き手の耳に心地良く響く話し方です。



一方、声が低くて根暗な印象の人は、図のように、低いところから始めて、そのまま一本調子で話してしまっています。これが根暗な印象の原因です。言葉の始めを少し高めに発声するように心がければ、印象がぐっと明るくなります。



また、声が高くて軽薄な印象の人は、図のように、話し始めの高いところから最後までトーンが落ちないままになっているのが問題。これだと、聞き手は耳障りに感じてしまいます。最後に向けて声を落ち着かせていくイメージで話すように心がけましょう。

 

「横隔膜」と「舌」が、通る声を作るポイント

声が小さくて通らない、という悩みを持っている人もいます。その改善ポイントは三つ。

一つ目は「腹式呼吸」。腹式呼吸とは「お腹に空気を入れること」ではありません。当然、空気が出入りするのは「肺」なのですから。では、なぜ腹部が関係するのか。それは、横隔膜の働きと関係しています。

横隔膜は肺と密着した筋肉です。肺は自力で動くことができませんが、横隔膜の上下によって縦方向に伸び縮みします。

吸うときに横隔膜が下がれば下がるほど肺に空気がたくさん入りますし、吐くときに横隔膜をしっかり上げれば、最後まで「吐き切る」ことができます。横隔膜を最大限活用して、十分な空気量を確保することが、よく通る声を作ることになります。

腹式呼吸を習得するのは簡単です。吸うときには「おへその下」(丹田)をふくらまし、吐くときには「おへその上」(笑うツボ)を意識する。これだけでOKです。

二つ目のポイントは「鼻呼吸」。口ではなく鼻で呼吸をしましょう。

口呼吸をしていると、いつも口が半開きの状態になり、唇の締まりが悪くなります。すると、声の通りも悪くなります。発声時に口内を通り抜ける呼気の流れが悪くなるからです。

ゴムホースを想像してください。水を勢い良く出したいときは、先端を指で押さえて小さくしますよね。その指を離すと、水流はダラダラと下に落ちます。同じように、唇も締まりをよくすれば呼気が勢い良く前に出て、そこに乗せる声も通るようになるのです。

口呼吸から鼻呼吸に直すポイントは「舌」。普通、口を閉じたときは、舌が上あごにぴったり密着しています。しかし、舌にある程度の筋力がないと、舌が下あごのほうに下がってしまいます。すると、つぶれた舌が喉の奥のほうに流れ、鼻へ行く呼気を止めてしまいます。それで口呼吸になるのです。口を閉じたとき舌が下がっている人は、舌で上あごを強く押さえつけるトレーニングをしましょう。

三つ目のポイントは「舌の形」です。呼気を前方へ勢い良く出すには、舌が「Uの字型」になっているのが理想。この形をスムーズに作れるか、鏡でチェックしましょう。
 

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滑舌をよくするには口をすぼめるべし >

著者紹介

篠原さなえ(しのはら・さなえ)

ナレーター

東京都生まれ。駒澤大学短期大学卒業後、東京FMのDJとしてデビュー。その後、レポーター、声優などの芸能活動を行なうかたわら、高校・大学野球や、駅伝の実況アナウンサー、スポーツ取材記事執筆にも活躍の幅を広げる。
現在は、番組ナレーションなど、さまざまな声の仕事に携わりつつ、日本語音声解明の研究を続け、後進指導や企業研修にも役立てている。

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