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「真田丸」に学ぶ企業生き残りの戦略とは?

2016年05月15日 公開
2023年05月16日 更新

陰山孔貴(経営学博士(MBA・工学修士))

真田家とシャープの抱える問題は同じ!?

人気の大河ドラマ「真田丸」。そこで繰り広げられている「弱者の戦略」は、現代のビジネスマンにも大いに参考になるというのは、経営学者の陰山孔貴氏だ。真田家の戦略に見る弱者の知恵と、今、同じような状況に置かれている意外な企業とは?

 

若手経営学者の悩み

少し前に、僕が仲良くさせてもらっている若手の経営学者達(僕らは30代後半のアラフォーなのですが、経営学者の先生の中では比較的若い方なので「若手」と呼ばれています)とこんな会話をしたことがありました。

「いろいろな理論とかシステムとかあるけど、やっぱり経営は人だよな~」
「確かに!」
「人だよ! 人!」
「そりゃ、そうだよな~」
「でも、それを言っちゃ、僕らの世界ではおしまいなんじゃない?」
「おしまいって?」
「『経営は人です! はい。以上!』なら、経営学、いらない気がしない?」
「確かに!」
「悩ましい問題だね(笑)」
「いや、それでも人でしょ! 人!」
「うーん。そうだよな~」

と、いう会話です。

今の企業は複雑です。
いろいろな要素が複雑に絡み合っていて、何が成功要因で何が失敗要因なのか、僕ら経営学者でも意見が分かれることは日常茶飯事です。

そこで、この記事では、少し視点を変えて、現代の企業よりもより組織がシンプルで、かつファンも多いと思われる戦国時代の組織を例にとって考えてみましょう(いささか、むちゃぶりな気もしますが)!

 

「真田丸」は弱小勢力生き残りの物語

今、NHKで放送されている大河ドラマ「真田丸」を毎週、楽しみに見ている方も多いはずです。
多くの方がこのドラマに惹きつけられる点は、弱小勢力である真田家が、織田、徳川、上杉、北条という巨大勢力に囲まれながら、そして、何度も絶体絶命な状態に追い込まれながらも、生き延びていくところではないでしょうか。

ここで「真田丸」を見ていない方もおられるでしょうから、少し「真田丸」について説明をさせて頂きましょう。
「真田丸」は、2016年のNHK大河ドラマで、天才の父、秀才の兄、その2人を追いかける好奇心と冒険心旺盛な次男坊の「真田信繁」を主人公とした物語です。
ちなみに、この「信繁」は「幸村」のことです。多くの方にとっては「幸村」の名前のほうが、馴染み深いのではないでしょうか。ただ、この「幸村」という名前は後世に創作された名前だとも言われており、「真田丸」でも「信繁」という名前が採用されています。

その「信繁」の父・昌幸は、元は武田信玄の家臣で、かなり信玄とも近い存在だった人です。
しかし、信玄没後、織田信長の侵攻により、名門・武田家は滅亡してしまいます。その結果、交通の要所であった真田家の領地は、織田、徳川、上杉、北条、豊臣という巨大勢力に次から次へと狙われ続けます。その中でも、真田家がなんとか生き残っていく姿を物語にしたのが「真田丸」なのです。

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著者紹介

陰山孔貴(かげやま・よしき)

経営学者(経営学博士・MBA・工学修士)

1977年大阪府豊中市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科で電子・光子材料の研究を行った後、シャープ株式会社入社。急拡大する液晶パネル事業の経営管理、ヒット商品となった「ヘルシオ」の企画開発などに携わり3度の社内表彰を受ける。ヘルシオの企画開発期には並行して、神戸大学大学院経営学研究科にて学ぶ(博士課程を修了)。その後、シャープが経営危機に陥るなか、経営企画室で企業再建業務に従事。その過程で「モノ」よりも「ヒト」を育てる仕事をしたいという思いが芽生え、2013年から大学教員へ転身。現在、獨協大学経営学科にて「経営戦略論」の講義を担当する。「実務」と「理論」の両面に携わった経験を活かし、経営学を身近な視点で学べるだけでなく「魅力ある大人」と出会えるゼミは定員20名に対し多くの学生が殺到する人気ゼミとなっている。獨協大学 経営学科 専任講師。

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