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関心事は自分のみ!? 空気を読まないサービス(フランス)

2016年12月07日 公開
2017年08月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(16)石澤義裕(デザイナー)

「自由・平等・博愛」も行き過ぎれば……


陽気なフランス人。残念ながら英語は通じていません。

日本の最北端から、樺太に流れて14ヶ月。
狭小住宅よりはるかに狭い軽自動車を棲み家とし、ヨーロッパ大陸横断中。

トルコのクーデターを向こう正面でかいくぐり、テロの襲撃が冷めやらぬフランスに潜入。
非常事態宣言を延長して、テロを未然に防ぐこと十数回。世界3位の武器供給国です。

さぞかし亀甲縛り的緊迫感が漂っているかと思えば、さにあらず。

しつこい検問や不当逮捕を覚悟していたものの、ひとりの警察官すら見かけません。家宅捜索はいつでもウェルカムです。

 

「自由」で「平等」過ぎる店員たち

日本人におけるフランスといえば、頭に「お」を付けるほど敬ってやまないわけですが、丁寧語にしたところで彼らは特別な歓待はしてくれません。

他人より自分、仕事よりバカンス。犬より小さいものは見えない彼らなので、空気など読めません。

かつては、海外がっかり度ランキングの1位に輝いた「おフランス」。
甘い幻想に反比例して、期待外れの連発です。

M字のロゴマークで有名な、世界一巨大なファーストフード。
フランスを放浪していながら1ミリもパリに足を踏み入れたことがない我が家にとって、エッフェル塔以上の観光地です。

このチェーン店には、フランス革命のスローガン「自由・平等・博愛」がそこはかとなく逝きています。

わざわざ開店時間ぴったりに行っても、どういうわけかお店を開けてくれない「自由」な営業時間。
お客と「平等」にお喋りに興じる店員は、たとえカウンターに立っていてもお喋りを優先。心から面倒くさそうに無人オーダーマシンを指差すのが、精一杯の「博愛」なのです。
オーダーマシンの言語欄に「日本人」と人種を指定しているのは笑って過ごしますが、肝心の注文画面は英語。裏切られ感はハンパないです。

マシンの導入で、人件費の削減とオーダーミスを防ぐ腹づもりでしょうが、そうは問屋がフランス人。
スタッフが配達先を探して店内をグルグルと回ったり、そもそもカウンターに放置されたままだったり、挙句に誤配もするのでプラマイゼロ。

エビサンドに牛肉しか入っていなかったと、食べ終わってから報告したところ、アイスクリームをくれました。
詫びるフランス人がいるとは、フランス人も驚く想定外です。

無料Wi-Fiの仕打ちは、いじめに近い嫌がらせです。

Wi-Fiを利用するには、携帯番号の入力が必要なのです。携帯を持っていない人は、「サポートにお電話を」というメッセージ。公衆電話なんてないのに、携帯がない人は電話してくれとは、とんちは一休さんに言ってください。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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