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神田昌典が「本棚に残した」24冊とは?

2017年09月29日 公開

神田昌典(経営コンサルタント・作家)

これが神田氏が「本棚に残した」24冊だ!

日本を代表するマーケターであり、希代の読書家としても知られる神田昌典氏。氏は最近、本との付き合い方を大きく変え、いわば「都合のいい読書術」にシフトしたという。

その具体的な内容は近著『都合のいい読書術』に詳しいが、本書の中に気になる記述がある。それは、神田氏が数百冊あった蔵書のほとんどを処分したこと、だが、それにもかかわらず本棚に残した書籍が24冊だけあった、という事実だ。いったい、その「選ばれし24冊」とはどんな本なのか。

以下、神田氏に1冊ずつご紹介いただいた。

 

1~3 世の中の「本質」が理解できる本

『流れと形』(エイドリアン・ベジャン、J・ペダー・ゼイン)
「Sカーブ」が不確実性を克服する』(セオドア・モディス)
『精神と自然――生きた世界の認識論』(グレゴリー・ベイトソン)

私が好んで読むのは自然科学系の本、それも世の中の本質的な構造を解き明かそうとするような本です。必然的に、本棚に残した書籍もそうした本が中心になっています。中でも多くの人にお勧めしたいのが『流れと形』です。すべてのかたちは「熱放射力学」によって作られているという「コンストラクタル理論」について説かれた本です。

この理論を一言で説明すると、「すべてのものは熱がスムーズに流れるようにデザインされていく」ということ。たとえば雷と樹木の筋、あるいは血管と河川の流れは驚くほど似たかたちを取るのですが、これは、熱がスムーズに流れるようデザインされた結果ということなのです。

私がこの理論について語る際にいつも挙げるのは、「アップルのコンピュータはなぜ静かなのか」という話です。アップルコンピュータの静音性についてはよく知られていますが、これはファンの数が少ないから。では、なぜファンが少なくて済むのか。それは、アップルのコンピュータが熱放射力学的に最適な構造をしているから、つまり、熱が最適に放出されるようなデザインになっているからなのです。アップルコンピュータの静音性はまさに、コンストラクタル理論によって実現しているのです。

そう考えたとき、この理論はさまざまな分野に応用できることがわかります。たとえば「情報」もまた熱の一つだと考えれば、それが最適に流れるような仕組みを作ればいいことがわかります。ウェブサイトなら、どんな構造で、どんなタイトルをつけ、どのくらいの文章量にするかなどを考えることで、最もスムーズに読んでもらえるウェブサイトになるのです。

続いてご紹介したいのが『「Sカーブ」が不確実性を克服する』。これは、商品のライフサイクルから景気の流れ、人の一生まで、すべては「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という「Sカーブ」を描くことを説く一冊。これまた、時代の先を読み解き、ビジネスに幅広く応用できる本質的な知識をもたらしてくれる本です。

興味深かったのが、「モーツァルトは早死にだったのか」という事例。35歳で亡くなったモーツァルトは一般には「早逝の作曲家」とされますが、彼が残した作品の数をプロットしていくと、見事にSカーブを描くのです。導入期を経て成長期に一気に数が増え、そして徐々にペースダウンしていくのですが、すでに35歳時点でモーツァルトの作品数は90%を超えている。すなわち早死にとは言えない、ということになります。

これだけ見ると、「早熟な人はピークが早く過ぎてしまう」とも読めますが、著者であるモディスはこうも言っています。「教育者に転身することで、再びSカーブを描くことができる」。つまり、自分自身が「成熟期」に到達してしまっても、新たに教育者として人を育てることにシフトすれば、再びSカーブを描くことができるということ。人材育成の面でも示唆の多い一冊です。

この分野で最後にご紹介したいのは、『精神と自然――生きた世界の認識論』です。これは私が大学生時代に読みふけった本なのですが、内容以上に、「対話を通じて知を想像していくプロセスの重要性」に気づかせてくれた本でもあります。

ニューギニアの部落からサイバネティクスまで「生きた世界」をどう認識するかを説くという内容で、正直、内容は相当に難解です。ただ、本書は「娘との対話形式」になっているのです。そのため、難解な内容がわかりやすく、かつ味わい深く入ってくる。知の創造は対話によって行なわれるということを知る原体験になった一冊です。

 

4~6 「物語」の重要性を説く本

『英雄の旅』(キャロル・S・ピアソン)
『神話の法則』(クリストファー・ボグラー)
『Managing Corporate Lifecycles』(Ichak Adizes)

『英雄の旅』および『神話の法則』はどちらも「ヒーローズ・ジャーニー」について扱ったものです。これはジョゼフ・キャンベルという人が提唱したもので、数々の神話を研究した結果、長年語り継がれてきた神話には「天命を受け、旅を始め、メンターに出会い……」といった一連の共通した流れがあり、ハリウッドでヒットした映画の大半もこれにプロットになっている、というものです。これもまた、情報はどうすれば最適な形で伝わるかという「本質」を教えてくれる理論に他なりません。

『英雄の旅』は、マーケターであるピアソンが、このヒーローズ・ジャーニーを元に人間のタイプを12に分け、それぞれの成長論について書いたもの。あの鏡リュウジさんが監訳しています。

一方、『神話の法則』はこの「ヒーローズ・ジャーニー」をより詳細に解説したもので、実際にどのようにストーリーを作るべきかを解説した本。作家や脚本家、ゲームのシナリオライター向けと言えるでしょう。

より正確には、ハリウッドの「ストーリーコンサルタント」のために書かれた本。これは映画化される前の脚本を読み、その価値を判断する職業。つまりハリウッドには株式アナリストのように、ストーリーの良し悪しを判断する「アナリスト」がいるのです。

「そんなことが可能なのか」と思う人もいるかもしれませんが、今ではアルゴリズムにより、かなりの程度までヒットの確率がわかるようになっています。そのことを詳述した『ベストセラーコード』という本がありますが、大ヒットした『君の名は。』を分析すると、このパターンに見事に当てはまっていることがわかります。

「Sカーブ」や「物語」の理論を、いかにマネジメントに落とし込むかが詳細されているのがManaging Corporate Lifecycles。会社の導入期、成長期、成熟期それぞれについて、どのようなマネジメントが必要で、どんな人材を採用すべきかが詳しく書かれた一冊です。Ichak Adizesの本は、本書を含めほとんど翻訳されていませんが、まさにマネジメントの天才。邦訳が出ることを望みます。

7~9 未来の日本・世界を読み解く本 >

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著者紹介

神田昌典(かんだ・まさのり)

経営コンサルタント・作家

上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済部に勤務。戦略コンサルティング会社、米国家電メーカーの日本代表として活躍後、1998年、経営コンサルタントとして独立。コンサルティング業界を革新した顧客獲得実践会を創設(現在は「次世代ビジネス実践会」へと発展)。日本最大級の読書会『リード・フォー・アクション』主宰。
主な著書に『2022―これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)など。

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