THE21 » キャリア » 「個」の力が組織を凌駕する時代の経営論【後編】

「個」の力が組織を凌駕する時代の経営論【後編】

2017年11月14日 公開
2022年10月25日 更新

【連載 経営トップの挑戦】第25回 須藤憲司

須藤憲司

 

国籍も性別も本名すらも問わない
超ダイバーシティな集合知のインパクト

――福岡でプレゼンしたとおり、カイゼン プラットフォームは人々に新しい働き方を提案しています。ママさんグロースハッカーも多いそうですね。

須藤 福岡で1年やってかたちが出来上がり、さて2年目は何をしようかというときに、福岡のデジタルハリウッドさん(デジタル教育学校)で講座を開かせてもらえないかと相談しました。グロースハッカーになるための講座で、既に活躍している福岡の現役グロースハッカーに講師になってもらい、生徒は男女関係なく募集。話は決まり、生徒さんもきちんと集まりました。

さらに、もともと福岡市が抱えていた課題にアプローチしようと、ママさん向けの講座も始まりました。福岡市は人口における女性比率が高く、専業主婦も多い土地です。就業している女性は、飲食業やサービス業に偏っていたりして、福岡市は女性活用の道を探していたのです。
ママさん向け講座では「卒業したら授業料キックバック」などの制度を設けていただいて、卒業生には時間の融通が利きやすい仕事を提供させてもらうなどのオプションをつけました。

あとは、オンラインでさまざまな授業を提供するSchoo(スクー)さんと協業で授業を行なったり、そういう積み重ねで全国に広がっていきました。

――なるほど。グロースハッカーさんたちの属性はどうなのでしょうか。男女比などどのような割合なのでしょう?

須藤 グロースハッカーの方々は実にさまざまで、フリーランスの方もいれば副業として取り組まれる方もいて、さらには自分が経営者としてやられる方もいます。
しかし、男女比についてはよく聞かれるのですが、実はそうしたデータをとっていないのです。

なぜなら、グロースハッカーの仕事には、性別も国籍も関係ないからです。名前すら、本名でなくても登録は可能。仕事を依頼する側からしても、大切なのは仕事と実績で、実績は全部見られるので、属性を把握しなくても問題は起きません。これが本当のダイバーシティなのではないかと思います。

――グロースハッカーをプラットフォーム化することで、ノウハウやスキルを持つ人々に新しい働き方を提供されている御社ですが、御社の社員さんたちの働き方には何か特徴がありますか?

須藤 才能や情熱のある個人の力を発揮させるプラットフォーム構想を思い描いたときに感じたとおり、自分たちの会社も、個人の才能や情熱を最大限に発揮できる会社にしたいという考えで、ずっとやってきました。

――社員の能力を最大限引き出したいというのは、多くの会社が課題としていることですが、具体的にどのようなことをされているのでしょうか。

須藤 ハード面で言えば、社員が新しいことを始めるとき、たくさんの人がハンコをつくような仕組みはとっていません。権限委譲も進めた上で承認フローを作っていますので、全部が全部僕に回ってくるということはまったくないです。そうした仕組み化は、比較的早くから進めていたと思います。

しかし、仕組み化も大事ですが、それよりも大切なのは、ミッションについて全員が考えることだと思います。僕もみんなにミッションを伝えますが、みんなにも考えてもらい、自分の仕事とミッションが合致しているかを確認してもらいます。やらされ仕事ではなく、自分が意志をもって働くことが一番大切だと考えているためです。

全員でミッションについて共有するために、週に1度、全社会議をしています。テレビ会議でアメリカもつなぎます。現状の会社の状況を話したあとは、「今週、僕はこういうことした」とか、休暇をとったら休暇の話なんかをします。

あとは、四半期に1度、全員でフィジカルに集まって次のクオーターについて話します。そこでは僕がずっとマイクを握るのではなく、みんなで「毎日やっていることの意味を確かめ、明日からの毎日で何をするか」を考える場にしています。

――最先端のIT企業と聞いてイメージするよりも、生のコミュニケーションをずっと大事にされているのですね。

須藤 フィジカルに集まることは絶対的に大切だと思っています。これは創業当時からやってきたことで、これからもずっと続けます。個人の情熱や才能を最大限に引き出す組織になるために、僕は「自分が従業員ならこうしたい」という視点で取り組んでいます。

次のページ
社長がプレゼンを100回練習する理由 >

著者紹介

須藤憲司(すどう・けんじ)

[株]Kaizen Platform代表取締役

1980年、福島県生まれ。2003年に早稲田大学を卒業後、(株)リクルート入社。マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室を立ち上げる。(株)リクルートマーケティングパートナーズにてリクルート史上最年少の執行役員を務めたのち、リクルートを退社し、13年3月にKAIZEN platform Inc.を米国で創業。17年7月には本社機能を日本へ移転、社名を(株)Kaizen Platformと改めた。国内での需要増加にともない、事業のさらなる拡充を図る。

THE21 購入

2024年5月号

THE21 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

日中間に、インターネットで橋をかける!

【連載 経営トップの挑戦】第24回 翁 永飆

ラクスル代表が語る「競争しなくても勝てる方法」【前編】

【連載 経営トップの挑戦】第23回 松本恭攝 ラクスル[株]代表取締役

ラクスル代表が語る「競争しなくても勝てる方法」【後編】

【連載 経営トップの挑戦】第23回 松本恭攝 ラクスル[株]代表取締役

後払い決済のパイオニア企業は、組織もユニークだった

柴田 紳(ネットプロテクションズ代表取締役社長)

医療×ITで、「納得できる医療」の実現をめざす

瀧口浩平(メドレー代表取締役社長)

女性の挑戦機会を増やし、日本の課題を解決する!

松本洋介(LiB代表)

<連載>経営トップの挑戦

×