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日本人の9割が「バカ」を隠している

2017年12月22日 公開
2023年03月23日 更新

坪田信貴(坪田塾塾長/「ビリギャル」著者)

日本人の9割が「バカを隠す」理由

「夢の膨らむ話の後に、いきなり『勉強⁉』」と、ウンザリされたでしょうか。そう、ビジネスパーソンのみならず、日本人は総じて勉強嫌いです。

 その最たる要因は一律化された教育システム。典型例が「漢字の書き取り」です。覚えの悪い子はいくら時間をかけてもなかなか覚えられない一方、早い子供は同じ漢字を延々と書くことにすっかり退屈してしまいます。個人差を無視して同じ方法をとらせることで、すべての子供がストレスを抱くのです。 

 ちなみに、教師たちにとっても漢字の書き取りは退屈な作業です。その子がどれだけ進歩したかではなく、単に「指定した回数をこなしたか」をチェックするのみなのですから。

 さらに勉強嫌いを助長するのが、親の対応です。

 どんな親も、子供が産まれる前は「健康ならそれでいい」と思うもの。ところが、産まれた子供が早々と言葉を覚えたり、瑞々しい感性を垣間見せたりすると、「うちの子って天才⁉」などと言い出します。 

 それだけなら微笑ましい親バカで済みますが、問題はその後。学齢に入ると、親は子供を他の子と比較し始めます。そして自分の子供よりデキる子がいると「もっと勉強しなさい」と強要し、競争に勝てなければ露骨に落胆します。

 こうした体験が、子供に挫折感を植えつけます。もちろん、学生時代を通して「自分がもっとも優秀」であった場合は別ですが、そんな人は日本中見渡しても数パーセント以下。それ以外の子供は皆、「トラウマ持ち」ということです。

 このトラウマは後々まで悪影響を及ぼします。それはすなわち、チャレンジ精神の喪失です。目標を高く置くと「×」や「不合格」の確率が高くなるから避けよう、適当なレベルでお茶を濁そう、と考える習慣がついてしまうのです。

 言うまでもなく、勉強の本来の目的とは自分自身の成長です。「できなかったことができるようになる」──つまり、バツだった問題にマルがもらえるようになることや、アイデア創出や仕事上の課題といった「答えのない問題」を解決すること。問題のハードルを自ら下げることで、「自分のできの悪さを隠すクセ」を社会に入った後も引きずると、「ビジネスパーソンの成長」は著しく阻まれることになります。

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著者紹介

坪田信貴(つぼた・のぶたか)

学習塾「坪田塾」塾長

心理学を駆使した学習法により、1,300人以上の子供を個別指導し、多くの生徒の偏差値を短期間で急上昇させた実績を持つ。2013年、著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)が大ヒット。その後も受験指導のみならず、企業の人材教育や起業アイデアの指導、講演活動等多角的に活躍中。

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