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40代は人間関係の「メンテナンス」を

2018年03月16日 公開

保坂 隆(精神科医)

困ったときに、支えてくれる人は誰ですか

「40代からは一生つき合えるような人間関係が必要」……そうは言われても、果たして「一生モノの関係」を築けていると自信を持って言える人はどれだけいるだろうか。ただ、日々の多忙さに流されず、40代こそ家族や仕事仲間との人間関係のメンテナンスに注力すべきと指摘するのは、日本を代表する精神科医の保坂隆氏。40代で見直すべき人間関係についてお話をうかがった。

 

なぜ、40代で人間関係を見直すべきなのか?

 会社人生の終わりが見えてくる時期になると、急に老後がリアルに感じられてくるもの。ちょうど50代くらいで同窓会が増えてくるのも、自分の人生を振り返りたい意識の表われでしょう。会社員にとって50代とは、第二の人生を考える移行期間だといえます。

 ところが今の40代、つまり団塊ジュニア世代はより早く、第二の人生を考える必要が出てくるかもしれません。

 2020年には、今の40代の賃金水準がピークに達すると予想されています。その結果、業種を問わず、早期退職を募る企業が増えてくるでしょう。終身雇用はもはや期待できず、会社に残ったとしてもその会社が存続し続けられるかどうかもわかりません。

 その結果、転職や独立を余儀なくされ、それを契機に自分の人生と向き合わざるを得なくなるのです。

 残りの人生をどう過ごすべきかの選択を迫られる40代。ただし、第二の人生を考える作業は、そう簡単ではありません。それまでの居場所や関係性を手放すことを意味しますので、喪失感を味わいます。それをきっかけに、うつ状態になる人もいるほどです。

 だからこそ私がお勧めしたいのは、40代で「人間関係をメンテナンスする」こと。会社の支えを失っても、あなたを支えてくれる人が周りにいれば、孤独感を感じることもありません。

 ちなみに私は、精神的にも肉体的にも支えてくれる、家族や恋人、友人や仕事仲間などといった人たちを「ソーシャルサポート」と呼んでいます。彼らは、次の三つの面で、あなたをサポートしてくれます。

 1つは、「情緒的サポート」。愛情面でつながる人間関係で、落ち込んだときに慰めてくれたり、相談に乗ってくれるので、精神的な支えになります。

 2つ目は、「手段的サポート」。困ったときに具体的に手を貸してくれる存在です。移動の手助けをしてくれたり、お金を貸してくれるといった物理的な援助をしてくれる人です。

 3つ目は、「情報的サポート」。問題を解決するのに役立つ情報を集めてくれる人です。独立や転職する際などに、重宝します。しかし、膨大な仕事を抱える働き盛りの40代は、忙しさにかまけてサポーターとの関係をないがしろにしがち。それでは、関係性が希薄になり、困ったときに孤立しかねません。

 このあたりで一度立ち止まり、「仕事に多くの時間を割く」という価値観をリセットし、人間関係をメンテナンスする時間を確保してはいかがでしょう。仕事の悩みを妻や子供に相談してみよう

 私は、40代が見直すべき人間関係には、大きく分けて二つあると思います。それは、家族関係と仕事上の人脈です。

 まず、家族との関係ですが、仕事に突っ走りがちな40代は、家族の中での存在感が薄くなる年代。家族のためを思って仕事に邁進しているはずなのに、平日は残業、休日は家で寝てばかりで家族とのすれ違いが続き、気づいたときには愛想を尽かされていたという例は多いもの。最近は熟年「前」離婚というケースも増えているそうです。

 具体的にはまず、妻への「ねぎらい」は欠かさないようにしましょう。たとえば、普段から妻に「ありがとう」を伝えていますか。掃除や洗濯など、妻がしてくれることを当たり前と思わずに、感謝の気持ちをきちんと言葉で伝えることで、会話は少なくても、妻は自分が認められているという気持ちを持つことができます。

 また、仕事がある日もせめて週に2~3日は、家族揃って食事をすることをお勧めします。食事は単なるエネルギー補給の場ではなく、美味しいという気持ちを共有したり、他愛のないおしゃべりを通じて家族の絆を深め合うコミュニケーションの一環なのです。

 同様に、子供に目を向けることも大切です。思春期に問題行動を起こす原因は、子供時代の満たされない感情があります。子供が今日一日をどう過ごしたのか、少しでも耳を傾ける時間を作りましょう。

「今さら何を話せば良いのかわからない」という人もいるかもしれません。私がお勧めしたいのは、時には妻と子供を信頼し、自分の仕事上の悩みを相談してみることです。

 実は私がそうでした。定年を迎えて、その後どんな仕事をしようか迷ったとき、まっ先に家族に相談したのです。とても良い情報をもらい、家族が自分をどう見てくれていたかもわかりました。いわば、家族が情緒面と手段面をサポートしてくれたわけです。

 これまでは、「家庭には仕事の話を持ち込まない」のがビジネスマンの常識だったかもしれません。ただ、これからは「家庭に仕事を持ち込む」ことも、大切になってくるでしょう。それまで家庭を振り返ることなく働き詰めだった夫や父親が、人生の転機に自分たちを頼ってくれたら、単純に家族は嬉しいものです。それが家族の信頼構築につながります。

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著者紹介

保坂 隆(ほさか・たかし)

精神科医

1952年、山梨県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。東海大学医学部、聖路加看護大学で教授を務めた後、聖路加国際病院リエゾンセンター長、同精神腫瘍科部長を務める。2017年8月より保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院診療教育アドバイザー。著書に『精神科医が教える 40歳からの人生を後悔しない習慣術』(だいわ文庫)他多数

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