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本当に使える!「ロジカルシンキング」の基本【前編】

2018年02月17日 公開
2023年03月23日 更新

苅野 進(学習塾ロジム塾長)

 

いくら論理的に考えても100%の正解は出ない

 ただし、ここでもう一つ理解してもらいたいことがあります。それは、どんなにロジカルに考えても、100%の正解は出ないということです。

 ○×で評価する学校のテストとは違い、何が本当に正しいかはやってみなければわからないのがビジネスの世界です。どんなに前提を擦り合わせ、綿密に例外を洗い出したつもりでも、いざ実行してみたら「想定外の例外」が必ず発生する。これも当たり前のこととして捉えなくてはいけません。

 ビジネスにおいて大事なのは、むしろここからです。

「例外が発生したから、これは失敗だ」で終わらせるのではなく、例外が発生した原因や理由を理解し、改善するというステップにつなげなければ、成果は出せません。このサイクルを速いスピードで回し続け、意思決定の精度をどんどん上げていくことが、目指すゴールに到達する一番の近道なのです。

 この「例外の発生」→「理解」→「改善」というステップにおいても、ロジカルシンキングやフレームワークが役立ちます。

 もう一度前提に立ち返り、「MECE」で考え漏れがなかったかを再チェックしたり、問題を小さく因数分解する「フェルミ推定」や問題解決のフレームワークである「SCAMPER(スキャンパー)」を使って理解や改善を進めたり、そもそも問題の論点が正しかったのか「ゼロベース思考」で考えるなどの活用ができます。

 例外という結果は、実行した人しか得られない貴重なデータです。100点満点がないビジネスの世界で成果を出すには、その結果を次の意思決定に活かし、今より一歩でも二歩でも前進するという積み重ねが必要です。

 また、組織で働くビジネスマンにとって、早い段階で上司と一緒に例外を把握しておくことはとても重要です。

 上司に提案するとき、「100%うまくいきます」とプレゼンして決済をもらったのに、実行したら例外が発生したとなれば、上司からの信頼は失われます。しかし、「今回はこの案でいきます。ただし例外が発生する可能性もあるので、その場合はこんな対処法を考えています」と事前に伝えておけば、むしろ上司からの信頼は増すでしょう。

「100%完璧な案ができてからでないと実行できない」では、実際のビジネスは回りません。ロジカルシンキングが万能ではないことを知ったうえで、日々の仕事の中で論理的な思考を実践的に活用してください。

 それでは後編で、ロジカルシンキングでよく用いられる思考法とフレームワークについて解説します。

≪『THE21』2018年2月号より≫
≪取材・構成:塚田有香≫

著者紹介

苅野 進(かりの・しん)

学習塾ロジム塾長兼代表取締役社長

東京都生まれ。東京大学文学部卒業後、経営コンサルティング会社にて、社会人向けのロジカルシンキングの研修・指導などを担当。自ら問題を設定し、試行錯誤しながら前進する力を養うことこそ教育の最も重要課題であるという考えから、2004年に学習塾ロジムを設立。小学生から高校生を対象に、論理的思考力・問題解決力をテーマにした講座を開講している。著書に、『10歳でもわかる問題解決の授業』(フォレスト出版)など。

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