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世界に通用する「論理力」を手に入れる

2018年04月04日 公開
2023年03月23日 更新

戸塚隆将(ベリタス代表取締役)

グローバルな思考力の磨き方とは?

グローバル化の波に、ともすれば乗り遅れがちな日本企業。その原因の一つは「論理力」の差にある、と戸塚隆将氏は指摘する。ゴールドマン・サックスをはじめ数々のグローバル企業に身を置き、ハーバード経営大学院で「世界基準」の論理構成を学んだ戸塚氏が推奨する「シンプルなロジック」と、思考力を高める方法とは。

 

「情報処理能力」より重要になるものとは?

「日本人の話は感覚的で論理性に欠ける」「何が言いたいのかわからない」といった外国人ビジネスマンの意見を耳にすることは多い。実際、その弱点が日本企業の競争力に影を落としている──と指摘するのは、世界有数のグローバル企業でコンサルティングに従事し、現在もグローバル人材の育成・支援に携わる戸塚隆将氏。「論理力」は今後、世界中どこにおいても、必要性を増すだろうと語る。

 「いわゆる『頭の良さ』の基準はさまざまです。情報処理の速さや機転、発想力、論理力ももちろん含まれます。この中で、今後最も必要とされ、かつ誰でも磨ける力が論理力。機転や発想力のように、先天的要素を含みませんから、何歳からでも伸ばすことができるのです」

 現在は重視されている「情報処理能力」も、論理力ほどには必要とされなくなるだろう、と予測する。

「情報処理は今後、AIの役割になります。人間が必死にこの能力を磨いたところで、速さも正確性も敵いません。我々が磨くべきは、さらに『上流』──つまり問題の定義とそこから導き出す望ましい結論、その方策や根拠といった『設計図』を作る力です」

 自身が接してきたグローバルエリートは、AIの台頭を恐れてはいなかったと振り返る。

「世界中で成果の出せる人に共通しているのは、『独自の意見』を持っていることです。どんなテーマに対しても『こうしたい』『こうあるべき』といった絵が描けている。そうした人々はAIを脅威とは感じません。AIを動かすプログラムを考える、つまり機械に指示する側に回れるからです。

 以前、Google の前CEOにして現アルファベット社会長であるエリック・シュミット氏のインタビュー記事を読んだのですが、彼はAIに対する人間の優越性として三つの思考力を挙げていました。一つは概念的思考、大元のコンセプトを考える力です。二つ目は、その実現までの筋道を立てる戦略思考。三つ目が、それをアクションに落とし込む計画的思考。彼がこの中で一番重要視していたのは、恐らく概念的思考でしょう」

 それは戸塚氏が語るところの「設計図」であり、グローバルエリートの「独自の意見」ともイコールの関係だ。さらに言い換えれば「正解のない問いに答を出す力」でもある。

「ほとんどの課題には、あらかじめ用意された正解などありません。ですから我々は、自分の頭で考えて答えを出さなくてはならない。論理的に考えて結論を出す力が必要なのです」

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著者紹介

戸塚隆将(とつか・たかまさ)

ベリタス代表取締役

1974年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス勤務後、ハーバード経営大学院(HBS)でMBA取得。マッキンゼーを経て、2007年、ベリタス株式会社(旧シーネクスト・パートナーズ株式会社)を設立、代表取締役に就任。
同社にて企業のグローバル人材開発を支援するほか、HBSのケーススタディ教材を活用したプロフェッショナル英語習得プログラム「ベリタスイングリッシュ」を主宰。グローバル人材を輩出し続けている。著書に『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(朝日新聞出版)等がある。
ベリタス株式会社
http://www.veritas-english.jp/company/
ベリタスイングリッシュ
http://www.veritas-english.jp/

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