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アマゾン「スピード経営」のカギとは?

2018年05月21日 公開
2023年03月14日 更新

田中道昭(連載「アマゾンの大戦略」に学ぶMBA講座 第3回)

権限委譲を進め、「後戻りできない」意思決定のみ行なう

それにしても、大企業病を予防し、つねにDAY1であろうとするベゾスの執着心は、やはり尋常なものではありせん。

4つの秘訣のなかでも、ここではとくに高速の意思決定システムのルール1について解説しておきたいと思います。それは、このルールが日本企業においても、スピード経営とそれを実現するための組織における権限委譲の秘訣になると思うからです。

先に述べたように、ベゾスは「自分自身は賛成しないけれど、みんながそう決めていくのであれば、決めた以上は自分もしっかりコミットする」ことがあると言っています。

それは、ルール1で規定されている「意思決定方法を2つに分類する、つまりは、意思決定を後戻りできるものと、できないものに分類する。そして後戻りできるものに関しては失敗する可能性も織り込みつつどんどん決定すればいいが、後戻りできないものは深く議論する」という内容から理解すべきなのです。

つまり、「後戻りできる項目」については部下に権限委譲を進めて、「自分自身は賛成しないけど、みんながそう決めていくのであれば、決めた以上は自分もしっかりコミットする」と言っているのです。

ベゾスが「後戻りできない項目」についての意思決定に深く関与しているであろうことは容易に想像できるでしょう。「組織のなかでできるだけ現場に近いメンバーに意思決定を委ねたい、でもそれは後戻りできることに限定するよ」ということなのです。

[第3回目のディスカッションテーマ]

今回の内容については、みなさんの組織においても十分に活用することができるものが含まれていると思います。特に「高速の意思決定システム」には見習うべき点が多いのではないかと思います。自分の組織における意思決定システムと比較し、それぞれの長所や短所を挙げてみましょう。また、自分の組織における意思決定システムで改善できる点にはどのようなことがあるでしょうか。

著者紹介

田中道昭(たなか・みちあき)

立教大学ビジネススクール教授

シカゴ大学ビジネススクールMBA。戦略論を専門として、経営を中核に政治・経済・社会・技術の戦略を分析する「戦略分析コンサルタント」でもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長などを歴任。現在、株式会社マージングポイント代表取締役社長。著書に、『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』(ともにPHPビジネス新書)など。

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