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「全女イズム」の後継者に聞く「女子プロレスの魅力とは?」

2018年11月15日 公開
2022年04月01日 更新

高橋奈七永(女子プロレスラー/SEAdLINNNG代表取締役)

 

「大量離脱事件」後の経験が宝になっている

 ――高橋さんが全女に入門したとき、憧れの選手はいたのでしょうか?

高橋 1995年のオーディションを受けて入ったのですが、堀田祐美子さんがいるところに入りたいと思って全女を受けました。堀田さんは格闘系のスタイルなのですが、人が良い、優しい方で、でも試合になると切り替わる。そんな強さと人格に惹かれました。

 ――高橋さんと似ている?

高橋 自分と似たタイプに憧れるところが、人にはあるんでしょうね。

 ――入門後、堀田さんから教えてもらったことはありますか?

高橋 試合を通じて、たくさんあります。

 全女は本当に勝ち負けにこだわる弱肉強食の世界で、負けたら次の試合が入りませんでした。今は各団体とも所属選手が少ないので、試合が入らないということはほとんどないのですが、当時の全女にはスター選手が大勢いましたから、ド新人の私なんかいなくてもよかったんです。

 だから、どうしても結果を残さないといけなかったのですが、みんなライバルですから、丁寧に教えてくれる人はいません。試合で背中を見て学んだり、自分の負けたくないという気持ちで練習したりするしかありませんでした。ぶっつけ本番でやる技もたくさんありましたよ。

 ――自分なりに練習するしかなかった?

高橋 そうですね。他の人と同じ練習だけをしていても強くなれないから、他の人がいないところで練習したりもよくしていました。

 私が入って2年目に会社が倒産して、上の世代の選手がごっそり抜ける「大量離脱事件」が起こりました。それでも興行は続けたので、それまで光が当たることのなかった、実力も大したことのないド新人だった私たちが急にクローズアップされるようになって、「自分たちがやるしかない」という状況になりました。人数が減って、誰かが1日2試合しなければならなくなったので、「私がやります」と手を挙げて、毎日2試合していました。その時代の経験は宝だと思います。

 ――「自分が背負っていかねばならない」という覚悟があった?

高橋 覚悟と言えるほど、よくわかっていなかったんですけど、「自分たちがやらなきゃダメじゃん」という話は同期としていました。倒産がどれだけ大変なことかもわかっていなくて、「うちらがいるから大丈夫」という妙な明るさがありました。

 ――ご自身の移籍は考えなかった?

高橋 少し揺らいだこともありましたが、同期も残ると言うし、最終的には皆で頑張っていこうと思いましたね。

 ――「全女のスタイルを引き継いでいこう」と?

高橋 そうですね。「全女イズム」とひと言で言っても、いろんな想いが入っているので難しいですが、良いところは引き継いでいきたいと思いました。それが「戦い」の部分で、今、SEAdLINNNGでやりたい部分です。

 

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著者紹介

高橋奈七永(たかはし・ななえ)

女子プロレスラー/〔株〕SEAdLINNNG代表取締役

1978年生まれ。埼玉県出身。アニマル浜口道場出身。老舗団体・全日本女子プロレス(全女)でデビュー。当時、女子プロ界最高峰のベルトと言われたWWWA世界シングル王座(現在は封印)の最後のチャンピオンとして名を連ねる。全女解散後はSUN→スターダムを経て、SEAdLINNNGを旗揚げ。2016年末には世界一危険な格闘技・ラウェイに挑戦。17年はザ・グレート・サスケとのTLCマッチで勝利。18年は大谷晋二郎との電流爆破、潮﨑豪とのシングルなど、その活動は多岐にわたる。

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