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「シングルタスク」に集中すれば、 脳にゆとりが生まれる

2018年12月21日 公開

川野泰周(臨済宗建長寺派林香寺住職)

「姿勢」「呼吸」「視点」をリセット

こなすべき仕事が多すぎて、心が荒んでいく……。多くの現場が人手不足に喘ぐ中、こうした状況に陥っているビジネスパーソンは少なくないはず。「脳の余裕はすなわち心のゆとり」そう指摘するのは、精神科医であり禅僧の川野泰周氏だ。どうすれば脳と心の余裕を取り戻すことができるのだろうか。そのノウハウをうかがった。

 

「注意資源」の枯渇が心のゆとりを奪う!

 IT技術やデバイスの進化によって、現在はどこでも誰とでも仕事ができるようになりました。こうした変化に伴い、プロジェクト単位で仕事を進めるビジネスパーソンが徐々に増えています。この働き方は、マルチタスクが多くなりがちです。

 しかし、私達人間の脳は本来マルチタスクが苦手。脳が一度に注意を向けられる総量は有限だからです。これを、心理学では注意資源(アテンショナル・リソース)と言います。

 にもかかわらず、「○○の案件の資料を作らねば」「××の件、返事まだかな」といった具合に、現代人は、常に多くの事柄に意識が分散しています。すると、脳は常にアイドリング状態で、休むことができません。

 その結果、脳疲労が蓄積し、自律神経が乱れ、「なんとなくやる気が出ない」「イライラする」といったように、メンタル面に不調を来たすのです。

 注意資源が枯渇しているのは、ビジネスシーンだけではありません。普段、目にする膨大なネットニュースなどが、現代人の注意資源を奪っています。

 ここ10年の間で、インターネット上では情報が膨大な量に増えました。YouTube を始めとした、動画が代表的でしょう。ただ、動画は文字情報以上に視覚と聴覚を酷使するために、脳と心をより疲弊させます。

 動画を見続けると、頭がボーッとしてしまい、自分の意思とは関係なく、関連動画を見続けてしまったということはないでしょうか。私はこれを、意識的に関連情報を探す「ネットサーフィン」ではなく、無意識に情報に流される「ネットドリフティング」と呼んでいます。

 さらに、SNSの存在が脳と心の疲労に拍車をかけます。「いいね」の数を他人と比較し、楽しそうにしている友人と自分を比べて劣等感を感じてしまう。

 そして、それを補完するように閲覧履歴から最適化された広告が物欲を刺激します。

 このように、マルチタスクや情報過多が、あなたの脳と心を疲弊させているのです。

 

脳の負担を減らしつつ生産性を上げる方法

 情報過多は、SNSを止めたり、デジタル断だん捨しゃ離り などで対処すればよいでしょう。でも、マルチタスクは、どう対処していいのかわからないという声をよく耳にします。

 こうした方に、私は次のようにアドバイスしています。

 まず、今までのマルチタスクを、「シングルタスクの集合体」と捉え直してください。

 皆さん、「コンテキストスイッチ」という言葉をご存じでしょうか。プログラマーが用いる専門用語で、CPUの演算処理方法の一つです。 

 CPU一台で同時に複数の処理をさせようとすると、動作は重くなります。そこで、今、計算している演算をある程度終わらせてから一度ペンディングし、別の演算処理をスタートさせるという作業方法です。

 CPUに比べて脳は切り替えが苦手。同時に少しずつ仕事を進めるのではなく、一つの仕事をある程度終わらせてから、次の仕事に手をつけましょう。 

 そうすれば、結果的に脳の負担を減らしながら、仕事をいくつもこなすことができます。何度もシングルタスクに集中し直すことで、全体の生産性を上げていくのです。

 この働き方を続ければ、仕事が終わった後の疲れ具合がいつもと比べて全然違うことに気がつくはずです。脳がシングルタスクを極め、極限まで集中力が高まったフロー状態になると、注意資源の浪費は逆に少なくなると想定されるからです。たとえフロー状態にならなくとも、マルチタスクと比べて、注意資源を温存できるでしょう。 

 

「瞑想誘導」で集中力を取り戻す

 では、シングルタスクに集中するには、具体的にどうすればいいのでしょうか。

 大切なのは、目の前の仕事以外に意識が逸れた自分に気づくことです。雑念に気がつくことは、逸れた意識を〝今ここ〟に戻すきっかけになるからです。

 また、瞑想誘導(メディテーション・インダクション)というルーティンも重要です。

 具体的には、目の前の仕事に集中し直すために、姿勢・呼吸・視点を正します。

 まず、席から立ち上がって、座る姿勢を正します。そのとき、背筋を伸ばし、胸を開くようにしましょう。

 次に、1回だけ深呼吸をしてあげます。軽くで構いません。

 最後に1分間、なるべく遠くを見るようにします。

 もともと、人間は狩猟時代から遠くを見ると交感神経が働き、近くを見ると副交感神経が働くシステムが備わっているとされます。しかし、パソコンの画像を見て仕事をしているので、近くを見ながら交感神経優位になるという矛盾が生じています。

 この矛盾が常態化すると、自律神経が乱れてしまうのです。この状態を解消するために、遠くを見て一度リセットする必要があります。

 脳に余裕が生まれることで、気持ちにもゆとりができ、アクティブな生活ができるようになります。仕事の後に、趣味の時間を作ったり、勉強したりといった意欲が生まれてくるのではないでしょうか。

 



著者紹介

川野泰周(かわの・たいしゅう)

臨済宗建長寺派林香寺住職

1980年、横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。11年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。14年末より、臨済宗建長寺派林香寺住職になる。現在、住職の傍ら、都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたる。近著に『禅僧の精神科医が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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