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世界を変える中小企業「インパクトカンパニー」とは何か?

2019年01月17日 公開
2023年07月03日 更新

神田昌典(経営・マーケティングコンサルタント)

カリスマコンサルタントの「20年の集大成」

『非常識な成功法則』『2022-これから10年、活躍できる人の条件』など数々のベストセラーを輩出し、「日本のトップマーケター」にも選出されたカリスマ経営コンサルタント・神田昌典氏。

その神田氏が、コンサルタント活動20年目の集大成として満を持して送り出すのが、最新刊『インパクトカンパニー』だ。成熟業界、衰退業種の中小企業であっても、「インパクトカンパニー」となることで復活し、世界を目指すことも可能になる。では、そもそも「インパクトカンパニー」とはどういうものなのか。新著から抜粋してお届けする。

 

法人の99%、従業員の7割……日本は「中小企業」の国である

インパクトカンパニーとは、経済的に成長しながら同時に、事業を通じて社会問題の解決を目指す中小企業のこと。大企業やベンチャー企業ほど目立たない存在ではあるが、これからの社会にとって決定的な影響力(インパクト)を及ぼす。

なぜなら、圧倒的に、その母数が多いからだ。中小企業は、日本の全法人数の99・7%、全従業員数の69・7%を占める。大都市圏を除くと、中小企業に勤める従業員比率は85・0%と、さらに増える。

この巨大セグメントが、新しい時代への適応に遅れたら、地元の雇用は少なくなり、地域社会の衰退はまぬがれない。

逆に、ほんの一部の会社でも、社会問題の改善をもたらしながら、成長を実現する事業に取り組み始めたら……これは、とても面白いことになる。高齢化社会・先進国の日本だからこその、地域社会創生のモデルを、世界に向けて描き出せるといっても大げさではないだろう。

 

「会社存続の危機」を迎えた会社こそ、変わることができる

「インパクト」という言葉は、すでに金融分野で使われている。「インパクト投資」とは、経済的利益を確保しながら同時に、貧困や飢餓、差別、環境破壊といった社会的問題の解決を目指す投資手法だ。同様に「インパクトカンパニー」は、自らの事業展開を通じて、社会問題の解決に取り組む会社のことだ。

ベンチャーが0から事業を立ち上げるのに対して、インパクトカンパニーは、成熟した既存事業から、新しい成長を創り出す。その際、既存事業の延長で成長するのではなく、ビジネスモデル自体を劇的に進化させるのだが、そのプロセスには、一定のパターンがある。

大抵の場合、それは会社存続の危機から始まる。

業績が壁にぶつかった結果、捨てるべき事業、引き継ぐべき事業が総点検される。事業を絞り込んだ後、ほどなく自分たちにしか実現できない未来が浮かび上がる。価格競争を繰り返す会社の日常が、社会的要請に突き動かされる日常に変わる。個人プレイがチームプレイへと進化する。マスコミに頻繁に報道され、地方の小さな会社でも、世界から注目されるようになるといった具合だ。

要は、限られた市場の中で硬直しかねない事業が、未知なる領域へと飛び出し、未来から応援される事業へと変わるのであるが─―、私の観察によれば、インパクトカンパニーへと進化し、本格的な成長をスタートできるかどうかの転換点が訪れるのは、創業20年へと向かうタイミングである。

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著者紹介

神田昌典(かんだ・まさのり)

経営・マーケティングコンサルタント、作家

上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士(MA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済局に勤務。その後、米国家電メーカー日本代表を経て経営コンサルタントとして独立。多数の成功企業やベストセラー作家を育成し、総合ビジネス誌では「日本のトップ
マーケター」に選出。2012年、大手ネット書店の年間ビジネス書売上ランキング第1位。ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。
主な著書に『2022――これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)、『ストーリー思考』(ダイヤモンド社)、『成功者の告白』(講談社)、『非常識な成功法則』(フォレスト出版)など多数。
アルマ・クリエイション株式会社代表取締役。一般社団法人Read For Action代表理事。

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