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影響力を高める「スピード仕事術」とは?

2019年03月05日 公開
2023年03月10日 更新

出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)

 

APUの学生から届いた「助けてください」のメッセージ

 先日、APUの学生のひとりから、フェイスブックのメッセージが届きました。

 

「出口学長、助けてください」

 

「助けてください」とは穏やかではありません。どういうことかと聞くと、「旅費がない」というのです。

 彼女が学友2人と食事をしていると、「今、香港の近くの深圳がすごいらしい。深圳に行かないと世の中のことがわからないから、3人で深圳に行こう」と話が盛り上がったそうです。そして彼女たちは、善は急げと、その場で3人分の航空券を予約しました。旅費は、3人で10万円。出発は5日後です。

 しかし彼女たちは、航空券の手配をしたあとに、「お金が足りない」ことに気がつきました。そこで、クラウドファンディングでお金を集めようと考えた。けれど彼女たちのフェイスブックではフォロワーが少ないので、「出口学長、助けてください。SNSで拡散してください」という以来が舞い込んできたのです。

 僕は「若いっていいよね」とコメントして拡散し、数日後、彼女に「お金は集まったの?」と聞いたら、「はい、8万円くらいは集まりました。銀行引き落としの日のギリギリまで必死でアルバイトして、残りのお金を集めます。私はスティーブ・ジョブズを超えるので、応援してください」と返事がきました。

 お金がないのに、先に航空券を買ってしまうスピード感と情熱は、すばらしい。彼女たちは「ただちに決定して、ただちに行動を起こさなければ、何も変わらない」ということをAPUで学んだのだと思います。

 企業でも設備投資を決めたあと、借入にしようか証券を出して市場調達を行おうかと考えるのが普通です。貯蓄の範囲内で設備投資計画を練るのは少数派で、彼女たちのセンスは企業と同じです。

著者紹介

出口治明(でぐち・はるあき)

立命館アジア太平洋大学(APU) 学長

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、72年、日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当したのち、大蔵省を担当して金融制度改革に取り組む。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て06年に退職。同年、ライフネット企画〔株〕を設立し、代表取締役社長に就任。08年、免許取得に伴いライフネット生命保険〔株〕に社名を変更。13年、代表取締役会長。17年に取締役を退き、18年1月、立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任。

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