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働き方改革のカギを握る「労働生産性の公式」とは?

2019年07月17日 公開
2023年03月02日 更新

石島洋一(公認会計士)

生産性向上の本当の意味を知っていますか?

安倍政権による「働き方改革」以降、「生産性」という言葉に注目が集まっている。ただ、多くの人は生産性という言葉を「効率化」くらいに考えているのではないだろうか。実は生産性=労働生産性とはれっきとした経営指標の一つであり、数式にてきちんと表せるものなのだ。

経理の本としては異例のシリーズ60万部を発刊した『決算書がおもしろいほどわかる本』の著者として知られ、近著『ざっくりわかる「決算書」分析』にて決算書分析のイロハを解説した公認会計士の石島洋一氏に、「生産性」の本当の意味と、そこから見えてくる「生産性向上の方法」についてうかがった。

 

「付加価値」の2つの計算方法

働き方改革の一環として、「生産性を高める」ことがどの企業でも求められています。

ただし、この「生産性」について、正確な理解をしている人は意外と少ないかもしれません。

そもそも生産性、正確には「労働生産性」とは、経営分析指標の一つです。労働力や設備が効率よく付加価値を生み出しているかどうかを見る指標です。

付加価値とは、企業が経営活動によって新たに生み出した経済価値のことをいいます。

たとえば、材料仕入はよその企業から仕入れたものですから、その企業の付加価値とはいえません。外注加工費も同じです。付加価値は、売上高からこうした外部購入費用を差し引いて求めます。

もっとも、実際の付加価値額の計算方法は多様で、売上高から外部購入費用を差し引く形で求める「控除法」と、付加価値の要素、たとえば人件費や賃借料、支払利息や経常利益などを加えていく「加算法」があります(これに減価償却費を加えることもあります)。

最近では加算法が主流になりつつあり、控除法を採用していた中小企業庁も加算法を用いるようになりました。

加算法の趣旨は、自社が経営をするからいろいろな人に分配できるのだから、それを付加価値と考えようというものです。社員、賃貸人、銀行、会社自身(利益)などに分配する金額を加えていくのです。以下のような式となります。

●付加価値=経常利益 +人件費+賃借料+金融費用+租税公課+減価償却費

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