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患者数2530万人!?「国民病」となった変形性膝関節症とは

2019年09月16日 公開
2023年02月24日 更新

桑沢綾乃(埼玉協同病院 整形外科部長)

 

人工関節という選択肢を選ぶと……

 ――根本的な治療ができないということで出てくるのが、人工関節置換術ですね。

桑沢 手術を受けた方には、「もっと早く受ければよかった」と言う方が多いです。ちょっと勇気がいるでしょうが、痛みがなくなり、まっすぐな脚で歩けるようになりますから。

 ――どのような手術なのでしょう?

桑沢 骨のダメになったところを面取りするように削って、人工関節(インプラント)を入れます。歯科医で虫歯を削って金歯を入れるようなイメージです。

 手術前には骨の削り方をシミュレーションします。当院の場合はナビゲーションシステムを導入していて、1mm1度の精度で、患者さんに合った人工関節を設置します。もうすぐ手術ロボットも導入する予定です。

 手術時間は、術者の技量で大きく違っていて、当院だと片脚で1時間弱、両脚だと2時間くらいです。これは、かなり早いほうですね。片脚で1時間半~2時間ほどかかるのが普通だと思います。

 術者の技量を知るには、手術の件数が目安になるでしょう。手術の件数が多い術者が、技量も高いと考えられます。

 また、人工関節には大きく分けてTKA(人工膝関節全置換術)インプラントとUKA(人工膝関節部分置換術)インプラントの二つがあるなど、種類が色々とあるので、幅広く対応している病院を選ぶのがいいかもしれません。

 ――かなり高齢になっても手術をする人はいますか?

桑沢 93~94歳でも、畑仕事をしているような方でしたら、手術をすることはあります。もちろん、全身的な検査は必要です。

 一方で、寝たきりの方だと、痛みをなくすために人工関節にしても、筋力がないのでそれを活用することがないわけですから、手術をするメリットは少ないでしょう。

 車椅子生活になってしまった方も、脚の筋力が衰えてしまっていますから、人工関節にしてもすぐには歩けないんです。筋力が残っているうちに手術をしていただきたいですね。

 ――手術後に気をつけるべきことはありますか?

桑沢 ないですよ。強いて言えば、正座やあぐらはあまりしないほうがいいとか、長距離の持久走やテニスのシングルス、バスケットボールなどの激しいスポーツは避けるとかですね。

 ――海外でも行なわれている手術なのでしょうか?

桑沢 日本では、いよいよ生活ができなくなってから手術をする人が多いのですが、米国では、膝の痛みでゴルフができなくなったから手術をするというくらい、一般的です。生活の質のために手術をするんです。

 ――手術の費用はどれくらいかかるのでしょうか?

桑沢 大雑把に言って、人工関節一つで200万円くらいです。けれども、保険診療ですし、高額医療制度を利用すれば10数万円程度でできます。

 

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著者紹介

桑沢綾乃(くわさわ・あやの)

埼玉協同病院 整形外科部長/関節治療センター 副センター長

2001年、東京女子医科大学医学部卒。川崎市立川崎病院、東京医療センターを経て、08年から埼玉協同病院勤務。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本人工関節学会評議委員。

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