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グラウンドワークス「エヴァンゲリオンの版権ビジネスが成功し続けている理由」



2020年04月07日 公開

【経営トップに聞く】神村靖宏(グラウンドワークス代表取締役)

 

キティちゃんを「先輩」と呼ぶ理由

 

 ――テレビ放送から約25年が経っています。一つの作品のライセンス事業が、これだけ長く続いている理由はなんでしょうか?

神村 作品そのものが持つ奥深さやデザイン性、キャラクターの強さがすごく大きいと思います。キャラクターの絵をドンと使った商品もあれば、色だけでエヴァンゲリオンの商品だとわかるものもあり、多様な展開ができますから。

 もちろん、それも支持してくださっているファンの方々の熱意があってのことです。それを冷まさないことが大事ですね。

 ――御社が成長し続けるためには、エヴァンゲリオンを盛り上げ続けなければならないと思います。そのためには、どのような施策を?

神村 それは、あんまり考えていないですね。場当たり的にやっているので、将来設計はないです(笑)。

 ――『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で新劇場版が完結するということで、ひと区切りになるかと思いますが……。

神村 区切りというより、山ですよね。映画が終わってからもやるべきことはたくさんあるし、そのためには公開前から仕込まなければならないこともあるし。

 映画の宣伝のために商品化や企業タイアップを展開して盛り上げていき、ピークは公開時に持っていくのですが、そのあとも大切なんです。ところが、映画会社の宣伝は公開日までにどれだけテレビに露出するかの勝負をしていて、意外と興行収入全体にコミットメントしない。『シン・ゴジラ』(庵野秀明総監督/2016年公開)のときも、東宝〔株〕は公開日までは宣伝しましたが、それ以降は予算をつけていないんですよね。興行収入約80億円でしたが、「後(あと)パブ」をちゃんとやれていたら100億円は絶対に行っていたと思います。

 ――映画公開後も後パブをするのが、御社の特徴?

神村 当社というより、カラーですよね。映画の宣伝そのものは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』もカラーがやっています。

 配給は東宝、東映〔株〕、カラーの3社共同で行なうことになっていて、こんなことは過去に例がありません。配給という仕事があまり知られていないので、世の中には響かないのですが、映画業界は震撼しています(笑)。

 映画監督が、自分の会社で出資も制作も配給もして、宣伝プロモーションの旗も振るということは、まずなかったことです。そういう意味では、庵野さんはディズニーやルーカス以上のことをやっているんじゃないかと思いますね。

 ――後パブというのは、具体的にはどんなことをするのですか?

神村 公開後に限らず、公開前でも同じですが、映画の中身をいっさい使わずに宣伝をするというのが、僕らがやっている手法です。映画は映画館で観て楽しんでいただくものですから、小出しにはしません。

 ただ、公開日の前後で違うのは、公開後はすでに観た人とまだ観ていない人が混在していて、すでに観た人がまだ観ていない人に自慢を始めたりしている、というところです。その世界に向けての宣伝は、観たことのある人が誰もいない世界に向けての宣伝とは、自ずと変わってきます。「早く観ないとネタバレされちゃうぞ」と煽ることも考えられますし、すでに観た人がさらに楽しめるサービスを追加することも考えられるでしょう。

 ――御社は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のプロモーションにどう関わっているのですか?

神村 これまで25年間、エヴァンゲリオンに関わってくださった数々の企業とのコネクションが活きていますから、新劇場版の最後の作品だということで、皆さん、話に乗ってきてくださっています。それらをできる限り形にしたいと思っています。

 ――神村代表取締役はキティちゃんを意識しているということですが、これからのエヴァンゲリオンはキティちゃんを理想として目指していく?

神村 理想というより、先輩ですね。僕はずっと「キティ先輩」と呼んでいます(笑)。

 僕の前任者がやっていたことは、ロボットアニメの大先輩であるガンダムや、仮面ライダー、ウルトラマンなどをお手本にして、そのグッズを出しているメーカーにエヴァンゲリオンのグッズも出してもらうということでした。早く同じ土俵に立ちたいと頑張っていたわけです。

 でも今は、ガンダムとエヴァンゲリオンはちょっと違うのだから、ガンダムと同じ土俵では戦わないようにしています。ガンダムに特化して成功したことをエヴァンゲリオンでやると、ガンダムとはちょっと違うところが、ちょっと不利に働くんです。ガンダムが100点、120点を取っているところで、エヴァンゲリオンが80点を取っても仕方がない。

 だから、もっと大きな成功をしているキティちゃんやドラえもん、あるいはディズニーのキャラクターがどんなことをやっているかのほうが気になります。キティちゃんの商品で成功しているメーカーと一緒に仕事をするとどうなるんだろう、と考えています。

 新幹線では、キティ先輩のために道を開いてあげられたことが、すごく嬉しいですね。エヴァ新幹線が成功したから、2018年からキティ新幹線が走れている、というところがあると思うんです。エヴァンゲリオンが開いたビジネスモデルがキティちゃんにトレースしてもらっているというのは、本当に誇らしい。

 特に苦労したのは商品化についてで、当社とJR西日本との両社の許諾が必要ですから、メーカーが作ろうと思っても、どうやって許諾を取ればいいのかわかりにくいんですよね。そこで一つの窓口で許諾を出せる仕組みを作ろうとしたのですが、JR西日本本体はライセンス事業をしていない。グループ会社の商社が窓口だったのですが、その商社をつないでいただくまでに、ずいぶん時間がかかりました。その後は話が早くて、エヴァ新幹線グッズはたくさん出ましたし、「シンカリオン」にもしていただけたのですが、立ち上がりが遅れたのは今でも悔やまれます。運行が始まった時点で、グッズはわずか5~6点。ところがキティ新幹線は、運行開始当初から博多駅にグッズコーナーがドーンとできていました。まぁ、悔しかったですね(笑)。

 ――最後に、先日ガイナックスの代表取締役に就任されることが発表されましたが、これはどういう経緯で?

神村 ガイナックスは制作現場が解体されていて、クリエイターもほとんど残っていないのですが、庵野さんの過去作も含めて、これまでに手がけた作品の権利をいくつか持っています。ただ、その保管状況があまり良くない。一部の権利は売りに出されているなど、散逸が進んでいます。原画などの中間資料の保全状況も良くなくて、カラーとグラウンドワークスで買い取ったり、譲り受けたりということを徐々に進めてはいたのですが、昨年、話したこともない人が突然社長になって、「どうしようか」と思っていたら、その社長が逮捕されるという事態になりました。権利の保全が第一なので、ガイナックスの状況を知っていて、ライセンスに知見があるということで、僕が代表取締役に推された、というのが経緯です。権利というものは1社だけで扱えるものではなくて、出資者、原作者、制作会社など、関係者の了解を取らないと動かせないので、ハブとなる会社が機能しなくなると塩漬けになってしまうんです。そんな事例は数多くあります。今後もDVDを出したり、イベントに使ったりしていただけるよう、権利をきちんと整理することが、今の最大の課題です。

 

《写真撮影:まるやゆういち》



著者紹介

神村靖宏(かみむら・やすひろ)

〔株〕グラウンドワークス代表取締役

1962年生まれ。兵庫県姫路市出身。大阪大学在学中に自主映画の制作集団「DAICON FILM」に参加。DAICONFILMの活動終了後、87年にNTTに入社。91年、〔株〕ガイナックスに入社。2010年、〔株〕グラウンドワークスを設立、代表取締役に就任。19年12月、〔株〕ガイナックス代表取締役を兼任。

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