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MSOL「プロジェクトマネジメントの実行を支援し、旧態依然とした組織を変える」

2020年08月07日 公開
2020年08月10日 更新

【経営トップに聞く 第34回】高橋信也(MSOL社長)

高橋信也

東証1部に上場しているMSOL(〔株〕マネジメントソリューションズ)は、東京ガス〔株〕やリクルートグループをはじめ、数々の大企業のPM(プロジェクトマネジメント)の実行支援を主力事業としている。売上は、2016年10月期の約15億円から、19年10月期には約39億円へと大きく伸び、営業利益も、同期間で約1億円から約4.5億円へと伸び続けている。創業社長の高橋信也氏に、成長の理由を聞いた。

なぜ、大企業の社員がPMをできないのか?

――クライアント企業のPMを実行支援するとは、どういうことでしょうか?

【高橋】PMは、米国では資格もあり、学ぶための大学院もあって、広く学ばれているスキルの一つです。けれども、日本で「PMを知っていますか?」と聞くと、「聞いたことがある」という程度の人が多く、ほとんどの人は学んだことがありません。そのため、大企業が何十億円、何百億円というお金をかけたプロジェクトでも、うまくいかないことがあります。日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れている理由の一つも、多くの人がPMを学んでいないからです。

 そこで我々は、PMに特化し、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス=PMの意思決定を支援する組織)の立場で、お客様のプロジェクトを成功に導くことを主力事業としているのです。

――クライアント企業の中で立ち上がったプロジェクトに御社の社員が加わって、PMOを担当するということでしょうか?

【高橋】そうです。場合によりますが、一つのプロジェクトに、当社の社員が1~3人、加わります。

 ただ、必ずしもクライアント企業のオフィスに当社の社員が赴くわけではありません。2年前に「Shared PMO」という、リモートで行なう、パートタイムのサービスも立ち上げました。PMは、状況の客観的な可視化と、それをベースにした意思決定、リスクの抽出をするものなので、リモートでも、パートタイムでも可能なのです。

 コロナ禍でテレワークが普及したことにより、状況の可視化の重要性はさらに高まっています。それを踏まえて、今年6月には、Shared PMOと、PMOのノウハウを盛り込んで当社が独自に開発した「PROEVER」というソフトウェアを組み合わせた、「PMO ONLINE」というサービスもリリースしました。おかげさまで好評をいただいています。

――大企業でも、自分たちではPMOをできないから、御社に依頼するのですか?

【高橋】日本の大企業は、一部を除いて、この30年間、変化の波に乗り切れていません。中小零細企業は変化を余儀なくされてきましたが、大企業は変われていないんです。実行力が失われていると言っても過言ではありません。それを自覚している企業から、当社に依頼があります。

 自分たちでは変われないのは、過去の延長線上に未来があると思っているからでしょう。そう思っている人は、変化に対して強いストレスを感じます。私たちは、未来は自分たちで作るものだと思っているのですが。

――実際にPMOをやっていて、変化に対する抵抗は感じますか?

【高橋】総論賛成、各論反対の人が多いですね。

 ただ、反対するのは、やってみた経験がないからです。大企業には、新卒で入社してから、ただ「上から言われたから」「昔からやっているから」「周りの人がやっているから」と、「なぜ、これをするのか?」を考えずに仕事をしてきた人が多い。自分でチャレンジをした経験がない人が多いんです。そうして育ってきた人は、「変えよう」とは思えないですよね。

 だから、私の場合は、いわば崖から突き落とすような荒療治もしていました(笑)。当社の社員たちは、プロジェクトメンバーと飲んだりして人間関係を築きながら、一緒にチャレンジをすることが多いですが。

――御社は業績を伸ばし続けています。ということは、社外にPMOを求める大企業が増えているということでしょうか?

【高橋】残念ながら、増えていますね。

――どういうプロジェクトに関わることが多いのですか?

【高橋】初めの頃はシステム開発が多かったのですが、今は約3割です。ありとあらゆるプロジェクトのPMOをしていますが、やはりITに関わるプロジェクトがほとんどで、システムやITを使って業務や組織を改革するプロジェクトが多いですね。業界再編に伴うジョイントベンチャーのプロジェクトなどもあります。

――どんなプロジェクトでもPMのノウハウは同じ?

【高橋】世界標準のノウハウがあります。6年ほど前に、当時は三菱重工業〔株〕の一部でしたが、現在の三菱造船〔株〕のPM強化支援をしたことがあります。造船事業についてはそれまで知りませんでしたが、やってみると、やはり同じでした。

――クライアント企業のニーズとして、「PMのノウハウを社内に根づかせたい」ということもあると思います。

【高橋】それはあります。ですから、一緒にPMをして、OJTで学んでいただくこともしています。ただ、経営層がPMの必要性を理解していない企業だと、十分に成長しませんね。自分たちがやってきた方法で、下の世代にもやってほしいと思っている経営者は多くいます。

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