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「これ、うまくやっといて」抽象的な指示しか出さない上司の罪深さ



2021年03月10日 公開

真子就有(div代表取締役)、細谷功(ビジネスコンサルタント/著述家)

真子就有,細谷功

日々の仕事の中で、「あの人は頭が良い」と感じることがあるだろう。その人は、何が違うのか?

プログラミング教室に加えて、今年、仕事に役立つスキルを、アウトプットを通じて体得するワークショッププログラムの「UNCOMMON」もリリースした〔株〕divの社長であり、YouTuberとしても大活躍する真子就有氏(マコなり社長)と、

数々の著書がベストセラーとなったビジネスコンサルタントの細谷功氏が、思考の本質について対談をした。(取材・構成:塚田有香、写真撮影:長谷川博一)

※本稿は、『THE21』2021年4月号の内容を、一部抜粋・編集したものです。

 

「抽象」の概念こそ人間ならではの知的能力

【細谷】私の著書『「具体抽象」トレーニング』(PHPビジネス新書)を、YouTubeで紹介していただき、ありがとうございます。自分の本を実際のビジネスに活用してもらえるのは、著者冥利に尽きます。

【真子】こちらこそ、大変勉強になる本をありがとうございます。初めてこの本を読んだとき、雷が落ちたような衝撃を受けたんです。「世の中はすべて抽象じゃないか!」と。

僕の性格は哲学者タイプで、何に対しても「なぜ?」「どうして?」と深掘って考える。だから、『「具体抽象」トレーニング』に「抽象化とはWhyを問うこと」と書かれているのを読んで、自分がやっているのは抽象化なのだと腑に落ちた。

それだけでなく、人間がコミュニケーションをしたり、アイデアを発想したりするのも、抽象化する能力があるからこそ可能なのだと気づくことができました。

そもそも言葉自体が抽象的ですよね。犬は、「り・ん・ご」という三つの音の並びを聞いても、それが具体的に何を意味するのか想像できない。抽象化能力があるから、人間はここまで繁栄できたわけです。

【細谷】真子さんもYouTubeで取り上げている歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書『サピエンス全史』(河出書房新社)では、宗教や社会など、目に見えないものについて語る「虚構の言語」を手に入れたからこそ、人間は特別な存在になったのだという見解が示されています。

つまり、抽象概念を有することが、他の動物とは違う、人間ならではの知的能力だということです。

【真子】『サピエンス全史』を読んで「虚構」というキーワードに出会ったときも、「確かにそうだ」と衝撃を受けたのですが、その学びをビジネスにつなげられずにいました。

細谷さんの著書を読むことで、会議で議論をしたり、上司が部下に指示を出したり、フレームワークを使いこなしたりといった、自分たちが普段やっていることはすべて、「具体的なことを抽象化したり、抽象的なことを具体化したりする作業」なのだと気づくことができました。

それで、抽象と具体の本質について日本人全員が学ぶべきだと思い、使命感に駆られて、YouTubeで『「具体抽象」トレーニング』を紹介したんです。

 

「論破する」ことが不毛でしかない理由

【細谷】そう言ってもらえると嬉しいですね。

私が感心したのは、あの動画に「『頭の悪い人』がやっていないこと」というタイトルをつけていたこと。「抽象」や「具体」という言葉自体が抽象的なので、そのままタイトルに使うと興味を持ってもらえないとおっしゃっていましたが、その通りです。

私は「興味がある人だけ読んでくれればいい」と割り切って、書名に「具体」と「抽象」を入れましたが、それが私のダメなところでもある(笑)。

だから、真子さんが色々と工夫して、この抽象的概念を誰にでもわかりやすく伝えてくれたことに感謝しています。

【真子】本当に心の底から、誰もが学ぶべきだと思ったんです。「抽象とは何か」「具体とは何か」を理解していないために、この世の中にどれほど多くの不毛な議論や間違った意思決定が生まれていることか。

細谷さんも本で指摘されていましたが、ネット上の不毛な議論はまさにその典型です。

例えば、「これからの時代は大学なんて行くべきじゃない」と主張する人がいたとき、その「べきじゃない」は51:49の話なのか、100:0の話なのか。

そこまで具体的に定義したうえで話しているわけではないから、あくまで抽象度の高い一般論でしかないのに、「でもこんな場合は~」とか、「自分なら~」とか、個別具体的な言い合いが始まり、挙げ句の果てに炎上する。

よく「論破する」と言いますが、どっちが勝った負けたではなく、ただ抽象と具体の違いがあるだけです。

【細谷】私もその意見に賛成です。この手のコミュニケーションギャップは、勝ち負けの話ではありません。抽象の世界にいる人と具体の世界にいる人が、お互いの姿が見えないまま、不毛な空中戦を繰り広げているだけです。

【真子】職場での会話でも、上司が「これ、うまくやっといて」みたいなことをよく言います。そんな抽象的な指示を投げたら部下から何が返ってくるかわからないというリスクをはらんでいるのに、上司はそのことに気づかない。

それで、部下がアウトプットを持ってくると、「何でもっとうまくやらないの」と怒る。部下は「もっと具体的に言ってくれればいいのに」とイライラする。こうした場面は多いですね。

【細谷】だからこそ、抽象と具体を理解し、どちらか片方だけで物を見るのではなく、双方を行き来しながら考えることが重要です。

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