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パソナ東北創生「釜石の企業と外部人材をマッチングし、地域の産業を伸ばす」

2021年03月07日 公開
2022年10月14日 更新

【経営トップに聞く 第45回】戸塚絵梨子(パソナ東北創生社長)

パソナ東北創生

2011年3月11日の東日本大震災から10年。津波による大きな被害を受けた街の1つ、岩手県釜石市に本社を置く〔株〕パソナ東北創生は、2009年に新卒でパソナに入社し、営業職として働いていた戸塚絵梨子氏が、社内ベンチャーで2015年に立ち上げた企業だ。地域の産業を育てるため、地域外の人材とのマッチングなどを手がけている。起業の経緯や事業の現状などについて、戸塚氏に聞いた。

休職してのボランティアを経て、社内ベンチャーに応募

――御社は2015年4月に〔株〕パソナグループの子会社として設立されています。その経緯は?

【戸塚】私はもともと釜石とは縁もゆかりもなかったのですが、東日本大震災の翌年に会社を休職し、社団法人の一員として復興支援活動をした場所が、たまたま釜石だったんです。それで釜石が大好きになりました。

 当時はまだ瓦礫があって、その撤去のために人手が必要な状況でした。私もその作業をしながら、全国から来てくださるボランティアの方々のコーディネートをしていました。

 その社団法人では住み込みでボランティアができて、夏休みになると1日に数十人、少ない時期でも5~10人が、2~3日から、長い方だと半年間ほど、滞在していました。その方々を、支援を必要としている1次産業や仮設商店街などの現場とマッチングしたり、滞在中のボランティアに食事を作るなどの寮母さんのような仕事をしたりしていました。

 休職を終えてパソナの営業部に戻ってからも、月に1回ほど、釜石に足を運んでいました。1人で行くこともありましたし、社内外の仲間を連れて行き、知っている釜石の方に話をしていただくこともありました。

 ライフワークとして釜石に関わり続けたいと思っていたのですが、ただ自分が釜石の方に会いに行き続けるだけでは意味がないのではないかと思うようになり、どのように関わるべきかを考えるヒントを得るために、仲間を連れて行っていた感じですね。

 そうしているうちに、瓦礫の撤去などに人手が必要な段階から産業の立て直しへと、復興における釜石のフェーズが変わってきました。皆さん、良い方々なので、行けば役割を作って受け入れてくれるのですが、その間、本業の手を止めさせてしまうようになったんです。土日に行って肉体労働を手伝うことよりも、腰を据えて活動することが必要になってきたのを感じました。そこで、自分も地域に入って、その一員として活動したいという考えが大きくなっていきました。

 会社の先輩も、ボランティアの経験を事業活動に活かすことや、会社のリソースを被災地のために活用することを応援してくれていました。そこで、思い切って会社に事業提案することにしました。

 パソナでは、ベンチャー精神を忘れないために、創業記念日を「チャレンジの日」として、年に1回、社員から新規事業プランを集めるなど、新たな事業創造を応援する風土がありました。そして、グループ代表の南部靖之が、雇用創造のためには事業を創る起業家の輩出が必要という考えのもと、ベンチャーファンドを社内に設立して、東北の産業復興を目指す「東北未来戦略ファンド」を立ち上げたところでもあったので、非常に良いタイミングでした。

――会社を設立する際は、事業性が問われたかと思いますが……。

【戸塚】もちろん、提出した事業計画には、十分な事業性があると書きました。実際に始めると大変でしたが(笑)。

 ただ、パソナの特徴かもしれませんが、「何年で黒字化しなければならない」ということももちろんとても重要ですが、それ以上に大義名分を重視する企業文化があります。それで役員会議で背中を押してもらいました。

――何人で始めたのですか?

【戸塚】スタートしたときは、パソナの後輩との2人でした。その後輩も、2014年に休職して、石巻と釜石でボランティアをした経験がありました。

 2人とも、地域の方々や被災地の支援をしている企業の方々とのつながりができていたので、その方々に挨拶をして回るところから始めました。

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