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世界旅行歴15年の旅人が語る「フリーランスの夢と現実」

2021年03月29日 公開
2023年03月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(61)石澤義裕(デザイナー)

ルワンダ

カメラマンでデザイナー、家具職人でもありながら看板製作も請け負うマルチ・フリーランス(ルワンダ)

 

「自由な生き方」なんて、とんでもない誤解

モロッコに閉じ込められて、1年間。

元気です。

非常事態宣言はどこへいったのか、いつの間にかモロッコは海外からの旅行者を受け入れていました。

日本人のバックパッカーが旅行していたのです。

日本語に飢えているので、さっそくカフェに誘っておしゃべりです。

旅人同士が会ったときは、まず互いの旅のルートを報告しあいます。

その後はたいてい、ボクらの海外放浪が不自然に長いので、

「お金はどうしているんですか?」と訊かれて、

「旅のあいだも仕事をしていて、デザイナーです」

「ああ、フリーランスですか」

いいですねー、実はボクもフリーランスを目指しているんですよ、というのが一種のパターンだったりします。

正確に言うと、ボクは日本に自分の会社があるから(今年は創業25周年!)、フリーランスではないのですが、従業員はいないし、見た目もやっていることも同じです。税金の払い方が違うくらいで。

2005年から仕事をしながら海外を放浪していると言うと、完全に「フリーランス=自由な生き方」をしているように見られます。

羨ましがっているようだから、

「特別に、フリーランスの心得えを教えてあげよう」

なんて、教祖みたいなことを言ってればいいのに、どういうわけか頑なにフリーランス神話を打ち砕こうとします。

フリーランスなんか、やめておけ!って言いたくなります。

特に、「好きな時間に好きなだけ働く」系のフレーズを耳にしたら、そんなことをしていると、すぐに人生詰むぞ!と脅します。

 

あえて「朝9時始業」にした理由

ボクがはじめてフリーとして仕事を請けたのは、ゲーム雑誌のデザインでした。

担当の編集者が午後出勤だったので、ご相伴に預かってボクも重役出勤。

毎朝、満員電車に乗らなくていいから「勝ち組」って思っていたかもしれません。

自由を得たようですが、編集者の勤務時間に合わせていると夜型人間になってしまい、ほかの会社の仕事を請けにくくなりました。

普通の会社とは、打ち合わせとか納品の時間を合わせにくいのです。

旅人によっては、別に仕事先を増やさなくてもいいではないか、必要以上に稼がなくてもいいではないか、みたいなことを言いますが、世の中そんなに甘くないです。

一本の太い顧客に頼ると簡単に詰みます。

実際、そのゲーム雑誌は2年と持たなかったし。

フリーランスになるなら、どこかが飛んでも巻き添えを食わないように、“浅く広く”クライアント(お客さん)と付き合わないとならないのです←ここポイントです!

そのため、ボクは25年前に“本格的に”独立したとき、始業時間を朝の9時にしました。

やがて社会はフレックスタイムに突入しましたが、それでも頑なに。

日中は、“浅く広く”付き合っているお客さんとの打ち合わせが多くて作業が進まないので、朝6時から働いていました。

ましては今は海外ですから、時差を考慮すると寝る暇がないくらいです。

というのは見栄で、そんなにたくさん仕事があるわけでもないので、旅先ではたっぷり寝ています。

「好きな時間に好きなだけ働く」なんて、それは「フリーランスで食ったことのない人」の妄想です。すぐに捨てるように!とビールを飲みながら諭しています。

でないと、ボクの人生が浮ばれないような気がしてね。

ウガンダのテレビプロデューサー

フリーランスのテレビ番組のプロデューサー。これでも仕事中(ウガンダ)

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