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“リモートワーク”で孤立した50代…会社がベテラン社員の「居場所」をつくる方法

2021年04月08日 公開
2022年10月06日 更新

松本利明(人事・戦略コンサルタント/HRストラテジー代表)

松本利明

そろそろ定年退職も見えてくる50代。会社を去ることを惜しまれる人もいれば、「いなくなってせいせいした」と思われてしまう人もいる。「せいせいした」と思われてしまう人は、在職中から孤立しがちなのではないだろうか。

そういった社員の「孤独」を会社側はどう防ぐことができるのか。ベテラン社員の「居場所」と「やりがい」を確保する方法を、人事・戦略コンサルタントの松本利明氏に伺った。(取材・構成:林加愛)

※本稿は『THE21』2021年5月号の内容を、一部抜粋・編集したものです。

 

ベテランだからこそできることがある

会社組織の側が、ベテラン社員を孤独に陥らせないためにすべきことは何でしょうか。

解決策は、やはり居場所の提供です。スキルが古くなってきた社員や、役職定年後にモチベーションを落としている社員は、若い人たちと一緒に仕事をさせるより、彼らだけの「ベテランチーム」を作るのがお勧めです。

と言っても、閑職につけよということではありません。閑職に相当する仕事はすでにデジタルで代替できますし、そのほうが生産性も上がります。

ここは、古参だからこそできることを任せるのが正解です。営業のベテランなら人脈も豊富ですし、コミュニケーションの綾も熟知しているでしょう。

また、エンジニアは勤続年数が長いほど、全体像を見て設計する経験が豊富です。若いエンジニアはパーツの設計は得意でも、全体としてどう組まれるのかをリアルに見るのは不得手なもの。

テクノロジーが入れ替わっている分野でなければ、そこをフォローする役割を担ってもらうことで、会社も本人も満足のいく仕事ができます。

報酬は、「出来高」の割合を高めることで、活躍に応じて稼げるようにすると本気になります。

私が関わったある出版社では当初、メインの月刊誌の制作を担うベテランたちはいささか疲れ気味、若手も出番がなくくすぶっている状態でした。

そこで月刊誌は若手に任せ、ベテラン勢は季刊のMOOKを担当してもらうことに。その報酬は基本給プラス、売上高に応じてインセンティブを上乗せする方式にしました。

すると若手とベテランの双方が、生き生きと仕事ができるようになったのです。まさに、それぞれの居場所と、やりがいとが確保された形です。

 

リモートワーク中の孤立を防ぐには

リモートワークがきっかけで孤独に陥る社員もいます。それを防ぐには、管理職が情報共有や人間関係の濃淡にばらつきがないかをチェックすることです。

人は無意識のうちに、相性の良い相手やよく知る相手に仕事を任せたくなるものです。そのため、偶発的に顔を合わせる機会のないリモートワークでは、接点が少なかったメンバーや、中途採用の社員や、年上の部下などに回る仕事が少なくなり、孤独を感じさせてしまうのです。

そこで、メンバー一人ひとりについて、知っていることを書きだしてみましょう。担当業務や仕事のスタイルのみならず、家族構成や趣味など、プライベートについても列挙します。

これらの「事実」に加えて、「心の共有経験」も挙げましょう。ほめたこと、叱ったこと、共に嬉しさを分かち合ったことなど。書いてみると、「Aさんのことを全然知らない」「Bさんとはまる半年、交流らしい交流をしていない」と確認できます。

濃淡を認識したら、関係の希薄なメンバーには意識的に仕事を任せると同時に、相手のことを知る姿勢を持ちましょう。

定期的な1on1ミーティングを取り入れるのも良い方法です。ここでの力点は、業務の進捗確認等などより、ざっくばらんな対話です。リモートワーク中は雑談の機会が激減しますから、そこを補えるような交流をしましょう。

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