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物語コーポレーション「コロナ禍の影響が少なかった理由の本質は『郊外』『焼肉』という業態特性だけではない」



2021年05月07日 公開

【経営トップに聞く 第47回】加藤央之(物語コーポレーション社長)

物語コーポレーション

「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」など、郊外ロードサイド型レストランを国内で559店舗(2021年3月31日現在)展開する〔株〕物語コーポレーション。海外でも13店舗(同)を展開している。

コロナ禍で外食企業の多くが大きなダメージを受けている中、同社は2020年6月期の第4四半期(4~6月)こそ売上を大きく減らしたものの、2021年6月期第1四半期(2020年7~9月)にはすぐにコロナ前の水準に戻した。

一般的に「焼肉はコロナ禍に強い」「郊外店はコロナ禍に強い」と言われるが、本当の要因は業態特性だけではないと、加藤央之社長は話す(取材は2021年4月8日に行なった)。

 

多様な社員が自分を表現することでイノベーションが生まれる

――加藤社長は2020年9月に34歳で社長に就任されました。コロナ禍が始まったのはそれ以前、2020年2月に業態開発本部長に就任された直後です。

【加藤】2020年6月期の第4四半期に売上を大きく落とした要因は、4月7日~5月10日の間、直営全店を休業したことです。新型コロナウイルスによって社会が混乱している中、企業として感染拡大防止が最優先であると考え、直営全店の休業を決断しました。

当時はまだ新型コロナウイルスの実態がわからず、とにかく人と人との接触を避けなければいけないと考え、直営全店の休業を意思決定しました。

当然ながら、休業をすると収入はゼロになります。今まで一緒に頑張ってきてくれたファミリー(従業員)の生活も守らなければなりません。さらに、いつまでこの状態が続くかわからない状況でした。

経営幹部と連日、様々な議論を交わし、最終的には店舗で働く従業員たちを感染の危機にさらすわけにはいかない、との考えから休業を決めました。

この時期は正解のない意思決定を迫られる場面が多くあり、自分たちの経営姿勢や人としての判断基準(ヒューマンスタンダード)を深く考える機会となりました。そのおかげで、社内の絆がいっそう強固になったと感じます。

――休業中は、どうしていたのですか?

【加藤】店舗配属の社員には普段通りに出勤してもらって、今まで手が回っていなかったところの清掃やWebを使った研修など、営業中には取り組みにくいことを積極的に行なっていました。

また、改めて私たちの経営理念についても啓蒙しました。その結果、社員が自分たちで考え、意思決定をし、提案をすることも非常に活発になりました。

もともと当社は社員一人ひとりが自分らしさを表現することを重視しているのですが、それがさらに強まりました。

一つ例を挙げると、入社3年目の副店長から、「焼肉きんぐ」のアプリポイントでコロナウイルス感染症対策への支援募金を行ないませんか、との提案が寄せられました。この提案は社内で大きな反響を呼び、営業企画部が中心になって実現することができました。

当社の経営理念は「Smile & Sexy」です。わかりやすく表現すれば、物語(物語コーポレーション)流の「ダイバーシティ&インクルージョン」。多様性を受容するとともに、自ら多様性を表現しようというものです。

一人ひとりが違っていていい。色んな人がいて、色んな考えがあっていい。違いこそが価値であり、個の尊厳を組織の尊厳の上位に置く企業である、という想いです。

「皆、違うんだから、自分も意見を言っていい」「思ったことは言っちゃえ」「いいと思ったらやっちゃえ」という意識をファミリーの全員に持ってほしいのです。

お互いが個性をぶつけ合うと「議論文化」ができあがり、経営が正しい方向に向きやすくなります。議論をすることによって、1人では思いつかなかったアイデアが浮かび、危険予測も広がり、考えが深まります。これこそが正しい判断につながり、イノベーションを起こすのです。

新入社員の採用も理念への共感度を重視し、「自分はこういう生き方がしたい」という考えを持っている人を採用しています。今年は170人弱の新入社員が入社してくれましたが、当社では「新入社員」ではなく、「幹部候補生」と呼んでいます。

「新入社員」という意識になると、素直に学ぼうという姿勢になるのはいいのですが、自分を表現しなくなります。いったんそうなってしまうと、「表現する自分」を作るのはかなり難しい。

教育も、社員に蓋をせず、「言っちゃえ」「やっちゃえ」という意識になるようにしていますし、人事評価制度にも経営理念を反映しています。

――どんな人事評価制度なのでしょうか?

【加藤】重要なのは、「なりたい自分」に直結するのかを考えながら目標設定をしてもらうことです。

「売上を〇%上げます。そのために、こんなことをします」というのは、点の話でしかありません。それを通じて、どんな自分になっていくのかが重要です。自分が考えたことを表現することで、「なりたい自分」へとつながっていきます。

例えば、店長は「メニューは本部から与えられるものだ」と思いがちです。けれども、そのメニューでは売上目標を達成できないと思うのなら、自分でメニューを提案するべきなのです。

人事評価では、自分で考え表現できているかを、上司から本人にフィードバックしています。この目標設定とフィードバックは3カ月に1回のサイクルで行なっています。

――各店舗と本部との関係がかなり密でないとできませんね。

【加藤】そのための仕組みも色々と作っています。

例えば「物語Web」という社内ポータルがあって、その中で、誰もが自分の思ったことを何でも発信していいことになっています。

先日、社内で使う「障がい者」という言葉を、社内用語として「チャレンジド(challenged)」に変えることにしたのですが、それも「物語Web」での議論を経て決まりました。

お客様に喜ばれた対応を紹介したり、女性社員が「無意識のバイアスを持っていないか」という問題提起をしたりもしています。

社員の誕生日には、それを祝うメールが「物語Web」の中を飛び交います。

自分を表現する「強さ」は重要ですが、「優しさ」や「温かさ」もある会社でなければ、結局、社員が自分を表現できなくなり、多様性が失われます。「強さ」と「優しさ」と「温かさ」が混在する会社にしたいのです。

 当社ではパートやアルバイトを「パートナー」と呼んでいますが、2万~3万人いるパートナーにも、誕生日に会社から図書券を入れた封筒をお渡ししています。そこに店長などがメッセージを添えています。

――「物語Web」の中で飛び交うメールは、ものすごい数になりそうですね。

【加藤】私のところにも1日に300通くらい来ますね。見逃さないようにするのが大変です(笑)。

 

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