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航空会社のJALが2017年からワーケーションを導入してみて「起こったこと」

2021年08月03日 公開

東原祥匡(JAL人財本部人財戦略部アシスタントマネジャー)

 

「実証事業への参画」で深まったワーケーションの利点

東原祥匡氏

現在では多くのメリットが実感されているワーケーションですが、17年の導入直後は、「休みの日に働かせるのか」と反発する声もあり、理解促進のために様々なことを行ないました。制度の意義や目的を説明するワークショップはもちろん、第一歩を踏み出すための体験企画も実施しました。

転機となったのは、鹿児島県の離島にある徳之島町での実証事業への参画でした。徳之島町は、教育機関が高校までしかないので、大学進学や就職で島を出てしまう人が多く、雇用の機会も少ないので戻って来る人も少ないという課題を抱えていました。

移住で人口を増やしたいという気持ちはあっても、いきなり移住促進は難しい。そこで、まずはワーケーションで滞在しながら仕事をしてみて、働くためには何が必要か、観光資源になりうる地域の魅力は何かといったことについて、外からの意見を伝えてほしいという町からの要望もあり、実施しました。

この実証事業は町の方にも大変喜んでいただきましたが、驚いたのは参加した社員からの感想です。

「オフィスだと目の前の業務に忙殺されてしまうが、あえて離れた場所で仕事をすることで、仕事や人生について考えることができた」「家族との時間ができた」「離島に自ら赴くことで、公共交通機関としての使命を再確認できた」など、予想以上にポジティブな反響がありました。ワーケーションは自律型人材の育成にもつながる施策なのです。

 

企業・個人・地域「三方良しのワーケーション」

このように、ワーケーションは、企業にとっては時間と場所にとらわれない柔軟性のある働き方を推進でき、個人にとってはいつもと異なる環境と経験による自己成長や新たな活力を得られ、さらに地域にとっては地元の活性化にもつながるという、三方良しの施策であると言えます。

実際、ワーケーションを含む様々な働き方に取り組んできたことで、休暇取得の意識も定着し、総労働時間も減少しています。ワーケーションの特徴は、一度利用した人が何度もリピートするという点です。

また、ワーケーションを導入した17年度に利用した社員は11人でしたが、20年度は400人まで拡大しています。社内でテレワークの規定が適用される社員が約2000人なので、そのうち約2割がワーケーションを利用したことがあるということになります。

実際にやってみて実感しているのは、ワーケーションは企業にとっても個人にとっても、働き方や生き方を考えるために非常に有効なツールだということです。

コロナ禍によって、ぼんやりと10年後くらいを想像していた事柄が、2、3年後には実現しそうな現実感を持って迫ってきているように思います。例えば、定住場所の多様化とそれに伴う働き方の変化です。

東京の近隣の市町村への転入率は上がっていますし、地域コミュニティの重要性が見直される中で、仕事と並行して地域での活動に参加したり、兼業や複業、ワークシェアという働き方も盛んになっていくと思います。高齢者人口が増えていくと、3割は家庭や地域で介護、7割は会社で勤務といった働き方を求める人も増えていくでしょう。

しかし、大半の企業がそうした変化にうまく対応できていません。そんなときに一歩踏み出すための施策としても、ワーケーションが有効だと思います。

キャリア後半にゆかりのある土地で働くことを選んだり、定年退職後に移住したりする人もこれからますます増えていくでしょう。そうしたセカンドキャリアの地ならしとしても、様々な地域で働く体験ができるワーケーションが活用できるはずです。

コロナ禍で一気にテレワークが浸透し、オフィスに通うのはこんなに少なくてもよかったんだ、ということに気がついてしまうと、働き方や家族、子育て、地域へのコミットに様々なパターンが出てきます。

そんな中で、社員みんなで作り上げていく制度として、ワーケーションというアプローチから、地域とのかかわり方やこれからの働き方を検証していきたいと考えています。

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