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廃棄される食材を、形を変えて商品に。各社の取り組み

2021年10月29日 公開
2023年02月21日 更新

THE21編集部

日本のフードロスは年間600万トン。その削減は、サステナブルな社会を作るうえでも、喫緊の課題の1つだ。フードロスとひと口に言っても、サプライチェーンの川上である生産地で規格外品などとして廃棄されるものから、川下である家庭や飲食店で食べ切れなかったものに至るまで、様々なものある。本記事では、食べられるのに、消費者のもとに届かず廃棄されてしまう食材を減らす取り組みをしている各社を取材した。

廃棄される食材を「アップサイクル」。「もったいないマーケット」も開設

オイシックス・ラ・大地
Kit Oisix「酒蔵応援!ベジチャウダー酒米リゾット」

食品の宅配サービスを手がけるオイシックス・ラ・大地〔株〕は、企業理念の中でも「食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決します」と掲げており、従来からフードロス問題に取り組んできた企業だ。

例えば、同社が宅配するミールキット(食材キット)には、必要な食材が必要な分量だけ入っており、家庭で廃棄される食材の量を約3分の1に削減できるという。

今年7月には、「Upcycle by Oisix」というフードロス解決サービスも開始。これは、食品加工工場で廃棄される、これまで食材として提供されてこなかったものを、付加価値をつけて商品化するものだ。

第1弾として発売されたのは、冷凍ブロッコリーのカット工場で出る茎を活用した「ここも食べられるチップス ブロッコリーの茎」と、大根の漬物工場で出る皮を使った「ここも食べられるチップス だいこんの皮」。梅酒を漬けるときに使われた梅から作った「梅酒から生まれたドライフルーツ」も発売し、4カ月間で約5トンのフードロス削減に貢献しているという。

また、今年9月には「Oisixもったいないマーケット」をオープン(10月から常設)。販売するのは、規格外品や、加工の段階で出る端材といった、これまでは廃棄されていた食材をメニューに活用したミールキットや加工品などで、10月までに50アイテムを販売する。

オープンと同時に発売された商品の1つ、「Kit Oisix『酒蔵応援!ベジチャウダー酒米リゾット』」は、コロナ禍による日本酒の出荷量減少によって余った酒米を使ったミールキットだ。このように、災害や急な出荷停止で行き場を失った食材も「支援食材」として商品化していく。

「規格外品や端材、支援食材の情報は、当社のバイヤーや、当社とお付き合いのある生産者、食品加工会社などから、日々、集まってきています。それらをお客様が簡単に美味しく食べられるレシピを開発して、ご提案していきます」(同社Oisix EC事業本部・神田聡美氏)

コロナ禍の中、家庭で食事をする機会が増えているが、Oisixもったいないマーケットで商品を購入すれば、よりバラエティ豊かな食事を楽しみながらフードロス問題にも貢献できると、顧客からも好評だそうだ。9月のオープン時に発売した「Kit Oisix『ふぞろいホッケのヤンニョン風味』」は1日で完売した。

「フードロス問題に感度の高い方は、まだ多いわけではありません。ホームページやミールキットに同梱するレシピカード、あるいはパッケージなどで、ご自身のお買い物がフードロス問題に貢献しているという価値を、もっと伝えていきたいですね」(神田氏)

10月の常設化では、これまで廃棄されてきた食材に名前をつけることで、その価値を見える化する取り組みも開始した。

「ニラの根っこに近い部分は、畑に残されてしまっていますが、実は一番美味しい部分。それに『にらっくきー』という名前を付けて、Oixis Kit『そぼろと野菜のビビンバ』に使っています。切り身を作る工程で出たサバの端材に『さばっぱ』と名前を付けて、『端材のさばで!ガパオセット』というメニューも開発しました」(神田氏)

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